お昼寝お泊まりお×××。
たっぷりの食事でお腹が満たされた美少女は、なんだか眠くなってしまったようで車に揺られてすやすや眠っていた。
リアラは運転席、優理は後ろ。眠り姫は助手席。少女を起こさないよう、二人は静かに帰宅路を歩んでいた。
優理家に着いて車を止め、部屋に帰って一息。
お姫様は優理の背中で安心し切って寝入っている。ぎゅうぎゅうと抱きついてくるせいで胸の感触とか胸の感触とか胸の感触とか……今日も煩悩がひどい童貞だ。
ただでさえ色々あってアレなのに……後で処理しようと決意する。
美少女を布団に寝かせ、掛け布団をかけてあげて、優理とリアラは座卓座椅子へ。
「リアラさん、夕飯どうします?」
「ええっ、ふふ、もう晩御飯のお話?」
「でももうすぐ十六時ですよ」
「そうだね……。食べる?」
「僕は……軽く? リアラさんは?」
「私もちょこっとだけなら。……アヤメちゃんは食べるよね?」
「そりゃもうたくさん。ちゃんと食べますよ」
「ふふふ、そうだよね」
というわけで、だらだらしながら二人で今日の献立を話し合う。
久しぶりに二人でお料理だ。なんだか新婚っぽくて嬉しい。
「リアラさんリアラさん」
「はーいっ」
「膝枕してもらっていいですか?」
「え、え、え、それはその、い、いいよ?」
「嬉しい」
正座している美人の太ももへ頭を置く。他意はない。性欲はある。
リアラが相手だと最近はあらゆる遠慮が薄れている気がする。自分の素を見せられるというか、自分の欲を見せられるというか。同じく強い欲望持ちだからだろう。その辺気負いせずお願いできる。
スカート越しでも伝わるむちっとした太ももの感触。しあわせだ。
「……ゆ、優理君っ」
「あい」
「その、ね?」
「うん」
「ぬ、濡れちゃったら……ごめんね?」
「……」
「……」
「……もう?」
「ま、まだ大丈夫だよっ」
「よかった。タオルとか敷きます?」
「そ、そっち? その、気にしないの?」
「別に。リアラさんが敏感体質なのは知っていますし……僕もほら、敏感体質なんで仲間ですよ。生理現象生理現象」
「幻滅しない?」
「特に。僕のこと好きなんだなって実感できて嬉しいです」
「もう……」
そっと頭を撫でてくれる。
困った顔をしているのだろう。でも嬉しい顔もしていそうだ。顔は見ない。こちらもこちらで、赤くなった顔を見せたくない。
微かな時計の音だけが聞こえてくる。
ちくたく、ちくたく。ゆったりと時間が過ぎていく。
いいなぁ、と思う。このまま時間がずっと、何事もない平和な時間がずっと…………。
「……すぅ」
寝入った優理を撫でながら、リアラもうとうとする。
正座は慣れている。膝枕も苦ではない。可愛く愛おしい男の寝顔を見ているだけで幸せだ。ふわふわと揺蕩う意識のまま、優理の頬に口付けを落とす。
「ちゅ、ちゅ……」
ちゅっちゅと繰り返し繰り返し、身体の柔らかさを存分に発揮して頬キスをする。
リアラの意識は曖昧、夢か現か、薄い口紅の色だけが優理の頬に残る。擦り付けられるように、紅色が頬に広がる。
「ちゅ……」
そうして、リアラもまた眠りに落ちる。
ぐでんと折れるように優理の身体に頭を埋めて寝入った。国家公務員の修練の賜物である、肉体の柔軟性が役に立っていた。
――一時間ほど経って。
「ん……」
最初に目覚めたのはアヤメだった。
起きて、ラーメン臭い自分のお口に微妙な顔をして、ぽやんとした顔で身体を起こす。そして優理とリアラを発見する。太ももに頬を押し付けて幸せそうな優理と、優理の身体に突っ伏して変な体勢を取るリアラと。
なんだこの状況、思いながら無音で口を濯ぎ歯磨きをする。
【エイラエイラ、ユーリたちが寝ています】
お布団に戻りエイラへ問いかける。問いかけというか、状況報告というか。
【返答。優理様はリアラ様に膝枕を頼みそのまま寝てしまいました。リアラ様は寝顔を堪能し、寝入りました。二人ともレム睡眠であるため、物音を立てれば起きるでしょう】
【ふむむ。わかりました。起きるまで待ちます】
ということなので、アヤメは布団からベッドに移動し携帯を弄る。
検索ワード、「ご飯」「夕飯」「晩御飯」「ひざまくら」「男の人 ひざまくら」「お風呂 男の人 一緒」「ひとりぼっ
「……ひとりは、いやです」
文字を消す。まだ何もわからない。少し心配なことがあるだけ。だから、考えなくていい。何も考えたくない。
「ユーリ、ユーリ……」
急に寂しくなってしまって。
こそこそとベッドから起き上がって毛布を引っ張って優理の下へ。座卓をどかしスペースを作り、優理の腰から下に抱きつく形で暖を取る。あたたかくて、優理の匂いに満ちていて。すぐ近くにリアラもいて。寂しさはすぐに消えていった。優しいあたたかさに包まれたままアヤメは眠る。
ざっと数十分ほどが経ち。
浅い眠りを続けていたリアラが目を覚ます。他二人と違い酷い体勢で寝たため身体の筋が痛んだ。
「――……すぅぅ……ふぅ……」
目覚め、とりあえず深呼吸をしておく。
好きな異性の匂いが全身を包み、体内までしっかりと満たされている。寝ている間もずっとこれだったと思うと無性にムラムラしてきた。というか深呼吸してちょっと濡れた。
「――ふぅ」
顔を上げ、優雅に髪を流して背筋を伸ばす。腕を上げ、座ったまま軽く全身を伸ばしコリを解す。軽く走る痛みは甘く溶けて消えていった。軽いコリや筋肉の収縮は即座に癒せる。国家公務員なら誰でもできる技前である。
それにしても、とリアラは頬に手を当て思う。
眠りは浅かったが、寝心地自体はめちゃくちゃよかったな、と。
「……ふふ」
それも当たり前か。未だふわっとした頭で、眠りこける優理の頬を撫でる。
好きな男と同衾だなんて気持ちよくないわけがない。安心係数は天元突破していた。
そうして十秒ほど経って、優理の下半身(深い意味はない)がもぞもぞしていることに気づく。視界が狭まっていたのと、毛布で隠れていたのとで見えなかった。ちょこんと頭頂部が覗いている。息苦しいのか、うごうごして鼻から上を覗かせた。ミノムシお姫様だ。
一瞬ピンク色で染まった思考も現実に戻る。寂しくて来てしまったのだろう。アヤメが優理に抱きついていた。寝顔もまた可愛らしい。
職業柄世界中の美女美少女(貴族や富豪の関係者含む)を見ているので、リアラの目は肥えている。そんなリアラから見てもアヤメと言う少女は別格だった。
人の理想を詰め込んだ、誰かの夢を形にしたような人工美少女。作り手はずいぶん凝り性で少女らしさに癖を持っていたのだなとわかる姿形をしている。
比喩でもなんでもなく世界一な美少女アヤメと比べ、自分や優理はなんと平凡か。
いや優理は違うか。見た目は平凡に見えて、ちゃんと肌ケアをして玉のお肌を維持している。細身なのにしっかり鍛えているとわかる骨格と筋肉。男性特有の髭は薄く、ケアのレベルが窺える。中性的な可愛らしさと美麗さの合間に垣間見える圧倒的な男性らしさ。
マッチョ好きには合わないだろうが、エッチ漫画に出てくる、いわゆる"普通の男友達"そのものだ。"普通の男性"なんて乙女の夢しか詰まっていないのだから、それだけで世界中多くの乙女が求めることだろう。
「……私は、恵まれてるよ」
ちゃんとした性欲持ちの男というだけで激レアなのだ。優理を平凡と言うのは無理がある。
アヤメや優理のような"特別"と比較して、自分はだめだ。
どこにでもいる一般国家公務員。二十七歳。女性。
ちょっと戦闘能力があって、ちょっと忍者能力があって、ちょっと情報収集能力があって、ちょっと国々方々へ伝手があるだけ。
見た目も中身も平の凡。……だけど。
「……」
だけど、こんな自分でも良いと言ってくれる優理がいる。こんな自分を好いてくれるアヤメがいる。
なんだかんだ自分を応援してくれる母もいる。最初は国家公務員の仕事を心配していたが、最近は優理を紹介しろ紹介しろとうるさい。……お母さん、まだ恋人じゃないって言ってるのに。友達でもいいからって……。そんな溜め息とも取れぬ曖昧な苦笑が漏れる。
「……起きようかな」
時計を見れば十八時が近い。結局二時間近くだらだら居眠りしてしまったらしい。まあ気分よく眠れたからいいけれど。
「優理君、アヤメちゃん。起きて」
「……」
「……ふぁい」
優理は無言で動く。顔を股座に押し付けてきた。変な声が漏れそうになった。口元を押さえ耐える。
「んぅ……ユーリぃー」
アヤメはぎゅーっと抱きついている。その位置は優理の股間だ。リアラの股間もやばいが、あちらもあちらでやばいんじゃないかと美人は邪推する。
「……ん、ユーリのユーリが成長しています?」
「!?!?」
邪推というか正しくやばかった。別の意味で変な声が漏れそうになったが頑張って耐える。
「こほこほ。アヤメちゃん、優理君もその、男の子だからね? 離してあげよう? 私が代わってあげるよ?」
「リアラが……?」
「!?」
自分に戦慄した。何を言っているんだこの口は。煩悩がひど過ぎる。まだ頭が回っていない。
ぽやんとした顔のアヤメもまた、頭は回っていないようだ。
「ま、間違えた! えと、えと、あのね。わ、私顔洗ってくるから優理君に膝枕してあげて?」
「ん……お膝枕……――! してあげます!!」
一気に目が覚めたようだ。しゅたっと起き上がり、はよはよとにじり寄ってくる。
公務員特技で素早く居場所を交換し、優理はアヤメに預けた。
「えへへぇ、ユーリユーリー♪」
ニコニコな美少女へ「じゃあ、ちょっとお手洗いに」と告げ返事を待たず直行。顔を洗うとはなんだったのか。先の発言はもう忘れた。
トイレで何をするかなんて言うまでもない。リアラである。ムラムラもやもやしているところである。まだ肺の中には優理の香りが残っている。感触もある。それはもう……野暮なことだ。
リアラがおトイレで致している間、美少女に頭をなでなでされている優理は目を覚ましていた。
目覚め、思う。
(アヤメに膝枕されている……?)
リアラに膝枕されたのは覚えている。気づいたらリアラがアヤメになっていた。
頬に伝わる感触はすべすべの肌だ。生足ならぬ生太ももである。
今日のアヤメは長ズボンを履いていたはずだが、気づいたらショーツ一枚になっていた。女性ものの可愛らしい薄青フレアショーツ。丈が長めとはいえ、太ももなど一切隠していない。真っ白なもち肌が優理の頬を受け止めていた。
「ユーリー♪」
頭上のお姫様は幸せそうな声で変な歌を歌っていた。歌詞は「ユーリ」しかない。ただしイントネーションは豊富で語尾が上がったり下がったり忙しそうだ。
「……アヤメ?」
「わ、ユーリ起きました?」
「う、ん……起きた」
起きた&起きた。
身体を丸めておく。これは朝だから。朝じゃないけど寝起きだから。生理現象生理現象。
「? ユーリ元気ないです? あ、さっきユーリの男性生殖器が元気になっていましたよ!」
「ごふぁっ!? なに、いや、なになに、いやいやいや」
「私もちょこっとエッチな気分になりましたっ」
「いやいやいやいやいやいや」
「エッチしませんか?」
「す――しない!! え、え、え、というかえ、それちゃんと我慢できないやつ?」
「む…………むぅ、どうでしょう。でもエッチなことしたいです。いつものです」
「ぐ……け、けどリアラさんいるし」
「大丈夫ですっ。リアラもおトイレでエッチなことしていますっ」
「なぁぁ?!!?」
つい、トイレの方を見てしまう。トイレの方、つまりアヤメのお腹側。つまり股座。
「――――スゥ」
「え、えへへ。見られるとむずむずしちゃいますっ」
顔を上げ、頬を染めた美少女を見つける。
頭に血が上る。無論、別の部位にも。リアラが一人でしているのは……まあ察せられる。前にもあったし。あの人あれで性欲強くて濡れやすいってわかっているから、処理しないと困るのだろう。そこは優理も同じ。
「…………やろっか」
「え……ほ、本当にいいのですか?」
「僕もちょっとね。処理しておかないと落ち着かなさそうだから」
「わ、わかりましたっ」
ちょっぴり戸惑い気味なアヤメを寝室に押し込み、優理はリビングで待機。布団の上、リアラがトイレから出たらすぐにでも気づかれる位置だが、そこは布団でそれとなく隠す。
ぱぱっと済ませ、ちゃちゃっと終えよう。三十分……いや十五分もあれば充分だ。リアラはたぶんもっとかかる。だから平気。やろう。
「……ぬ、脱いじゃいましたっ」
「僕もだよ」
「ふぇ!? ゆ、ユーリもするのですか!?」
「うん。一緒にしようね」
「~~っ、は、はいっ!」
そんなこんなで、突発的なストレス解消行為が始まった。
当たり前の話であるが、今の優理は頭が性欲で支配されており、理性は薄い。寝起きで考えがまとまっていないこともあるし、他のことを考えようにも煩悩煩悩でひどいことになっている。だからこその今だ。
のちの賢者タイムで「なんてことを……」と後悔するにもしても、今だけは本当の意味で頭の中が性欲一色だった。
明日の不安も未来への迷いもない。やはり性欲がすべてを解決する。……ただし、後ですべて返ってくるが。
ちなみに急展開でアヤメと優理の性的関係がステップアップを果たす状況を、エイラは諸手を上げて歓迎していた。
『予想外でしたがアヤメ様が喜んでいて嬉しい。ヤッター!』
とはどこぞのAIの深層心理の一言である。
余談であるが、リアラはトイレ外の状況も結構気にしているので、国家公務員の無音技術を駆使してこっそり外を見たりもした。結果、色々見て聞いて余計にトイレにこもるはめになったりもした。余談である。
――Tips――
「ストレス解消行為」
この単語はスラング的な意味合いを含まず、どちらかと言えば学術的な意味合いが大きい。別名「過酷」。
性欲逆転世界においてはもちろん、現代地球社会においてもストレスを溜め込むことは毒である。集中力の欠如、記憶力の低下。他にも色々。何より無意識に異性を探し求める思考回路が良くない。これを俗に、性犯罪係数と呼ぶ。
異性と共に行うストレス解消行為には段階がある。
一、互いに視覚を通さず聴覚のみでやり取りを行う。さらに片側だけが行為をする。いわゆる指示受け。
二、依然としてやり取りは聴覚メインだが、二人同時に行為をする。いわゆる相互。
三、聴覚だけでなく別の感覚器官も使う。特に嗅覚及び視覚が多い。稀に味覚も入る。いわゆる見せプ。
四、五感、とりわけ触覚が行為に入る。この段階よりストレス解消行為は別名「エッチ」とも呼ばれるようになる。
五、五感全てを使った行為になる。この段階では最終以外の多くの行為を伴う。バリエーション豊富。
六、セックス、性交、まぐわい。
※このTipsはフィクションです。
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