第2話 裏

「いやあ、でも驚いたっすねえ。まさかプロデューサーが憲兵隊に捕まっちゃうなんてね、ハルキさん」

 イレイサー事務所ではニッタがハルキに向かって昨日の事件のことを話している。


「無駄口はいい。んで、なんかわかったのか?」

「あれから橋の上の女について調べたんすけど全然です。だれもキラキラ光る女なんて見てないっすよ」


 報告を聞いてハルキは溜息をつきながら「なんだかこっちも手探りで進んでる感じだな。キラキラ光る女も誰も見かけてないし、どこかに情報はないのかよ」と言い放つ。


「でも、ハルキさん、あの鍋パの日ってなんだかおかしかったですよね? あれが事件にかかわるような不気味なことってことなんすかねえ?」とニッタが尋ねる。


「ん? なにが? なんかあったか?」

「なんでおぼえてないんすか! あの日、ほら、いつもは一番に来るはずのツノダさん、遅れてきたじゃないっすか。しかもなんだか落ち着かない感じで」

「ああ、そういやそうだったかな。んだけど、あのおっさんが落ち着かないのはいつものことだろうが」

「まあそうなんっすけどね。あ、そうだあの時ハルキさん一人で飲んでたんで聞いてないでしょ。あの時みんなで話してたんすよ。そしたらツノダさん、なんだか夢を見ているようだって言ってましたもん、こんなものが手に入るなんてって」

「なんだと?! おい、その話、詳しく話せ!」

 ハルキが興奮気味に叫ぶと、ニッタは口ごもりながらも続けた。


「ツノダさん、あの日なんか買物をしてきたんですって。買ったものは教えてくれなかったんすけどね、なーんかニコニコしながらやけに嬉しそうにしてたんすよ。あれ、きっと奥さんへのプレゼントっすよ」

「おい、ニッタ。お前もっかい橋に行ってきてくれるか?」

「どうしたんすか?」

「あの日おっさんの家から橋までの間、どこの店に立ち寄ったのか確認してくれ。こっちは、そうだなあ、しょうがねえ、イッコとホリさんに頼るしかねえなあ」

 と頭をかいた。


「イッコさんとホリさんすか? え? じゃあツノダさんて誰かに嵌められたってことっすか?」

「そんな規模の話かどうかはわかんねえけどな。おっさんが見ず知らずの人を殺すわけねえだろう、なんか裏があんだろうよ」

「そうっすよねえ。ツノダさんが人を殺める姿なんて想像できないですもんねえ」


「ってなにボケっと突っ立ってんだ! とっとと行って来い! 仕事しろ、仕事!」


「うっす。じゃあオレはその露店商を追えばいいんすね。んじゃあ行ってくるっす!」

そういうと駆け出して行った。

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