Ⅷ「少女と怒りと誰かと一緒」

 ◇◆◇◆



「ん……」


 オウカの意識が浮上する。目を開けるとそこは見知った天井。自宅である廃バス。


「ここは……俺の家。戻って来たのか……」


 ボソリと呟く。無事に異世界から帰れたオウカ。服装はその時のままだったが、足りないモノがあった。彼と一緒にいた【オートクレール】である。


「それにしても……」


 嘆息するオウガ。

 彼女との交流を思い出す。彼女とはある理由から途中で別れた。そのあれこれを思い出していると、


「どういうつもり?」


 声が聞こえた。心なしか声音が冷たい。

 誰の声なのかはわかるので視線を向けると、そこには一人の少女がいた。赤紫色の首元まで伸びた髪に、同じ色の瞳、綺麗とも可愛いとも形容される顔立ちをしている。


「よお。元気?」

「……」


 軽口に睨みを返す少女。それに肩を竦めるオウカ。


 こうなっているのには理由がある。


 この少女から、帰る前に何かしらの武器<冥刀>を持って行くように言われたオウカだが、彼が掴んだのは少女の手。つまりは少女を選び、連れて帰って来たのだ。


「もう一度聞く。どういうつもり? サクヅキ=オウカ」

「どうって? これが俺の選択」

「その選択に至った経緯を聞いている」


 少女の口調は少し荒くなっている。


「あなたは、本来凄まじい力を手にするはずだった」

「うん」


 それが【オートクレール】との取引だった。ところが、紆余曲折末、手に入れるはずだった力は手に入らなかった。


「でも代わりの力は手に入れたぜ?」

「知っている。でも今あなたが持つモノは残滓に過ぎない」


 最終決戦時に使ったモノはその場限りなので除外。


「だからこそ、わたしは代わりになるモノを用意した」


 どれもが選りすぐりの逸品であり業物。そういう代物は大抵デメリットが大きかったりするのだが、それも踏み倒せる。


「なのに、なぜわたしを選んだの?」


 少女の感情は高ぶっていた。恐らく答えを間違えれば、襲い掛かって来るかもしれない。そんな彼女にオウカは、


「寂しかったから」

「え」


 答えを告げた。それにポカンとした表情になる少女。そんな少女に構わずオウカは続ける。


「俺さ、この世界こっちで仲の良い友達っていないんだ」


 高校に入学したてなうえ、彼自身社交的とは言えないのでまだ友達はいない。勿論、知り合いが全くいない訳ではないが、どれもそこまで深い仲ではない。


異世界あっちではさ、仲間や親友が出来た」


 お互い命を預け合う事の出来る仲間達。深い仲の友人が幾人も出来た。


「でも、なった」


 一拍置いて続ける。


「……後悔はないけど」

「……」


 寂し気なオウカ。


「だから、話し相手が欲しかった」


 あんな事があった、こんな事があったと、思い出を語りあう人が、チカラより何より欲しかった。それに、


「お前さ、俺がもしあの中から選んだら、一人になっていただろう? いやもしくは……いやこれは言わないでおく」

「……」


 沈黙の肯定だった。


「人ってさ、一人だと駄目になる。考えや行動が変な方向に向くんだよ」


 知っているだろう、よくわかるだろうとオウカは少女に語る。

 実際その通り。この二人は見て来たから知っている。考えや行動がおかしな方向に向き大迷惑をかけた馬鹿共を。……一部馬鹿は言いすぎだが。


「だから、誰かと一緒にいなくちゃダメなんだ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【コソコソ話】

(#ー#)<結局あの剣はどーしたんだ?


(・▽・)<ネタバレになるので詳しくは言えませんが、


(・▽・)<もうないとだけ。


(㈩*㈩)<因みに、なくなったのは異世界の旅路の序盤。


(㈩*㈩)<「ジ○ジョ」で言うなら一部か二部あたり。


(#ー#)<早くね!?

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