『解放者』

やましん(テンパー)

『解放者』


 解放者は、深夜の苦しみを救うために現れる。


 闇の中から。


 彼らは武器は持たないし、医療器具もない。


 ただ、ひたすら、優しく声をかけ、苦しみを聴き、すいとるのだ。


 それだけだ。


 しかし、あまりに、苦しみが深く、吸いとりきれないこともある。


 それは、やむなく、静かな、死を与えることになるかもしれない。


 しかし、解放者は、死神ではない。


 生かすことが目的なのである。


 苦しみを透いとる作業は苦しい。


 吸いとられるがわも、透いとるがわも。


 叫び声なしには、なし得ないのだ。


 今夜も、あちらこちらで、苦しみの叫び声が上がる。


 それこそ、生への闘いなのだ。


 あえぎ。うめき。さけび。


 激しく悶えたりもする。


 壮絶な、生への執着であり、聖なる闘いだ。


 ああ。すべての挑戦者に、勝利を与えたまえ。


 さわやかな、朝をもたらしたまえ。


 苦しみを、癒したまえ。


 うんじぁまいやら。


 うんじぁまいやらあ。


 めんくいにこう。


 


      

 

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『解放者』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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