Si背ヵn0利己サービス

加藤とぐ郎No.2

前口上

 この物語は私が消えていく物語。


 人間は、利己の奴隷である。生まれてから死ぬまで、自分のためだけに命を捧げる。


 自分が生きるために、安全を得るために、孤独を紛らわすために、何かを愛するという快感を得るために、死後も自分が在った事を遺していくために。


 己の利のために、己に隸属する事から逃れる事はできない。


 私も、私である事から逃れる事ができなかった。


 自殺も、結局は自分に殺されるということ。人間は、どこまでも自由なのだ。自らに由り支配されている。


 故に人間は自分から解放されるために、他者に救いを求める。己の欲求を形容し、他が為、人の為と偽る。理性という建前で、根源にある利己的欲求を覆い隠す。


 しかし、すべては幻想に過ぎない。それすらも、救われたいという己の利に従っているだけだ。


 私はただ、私が憎かった。


 この物語は、私が消えていく物語。

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