第17話 ようこそ、魔法学校へ(2)


     2.


 鳩原は慌てて階段を駆け下りて、カフェテリアにやってきた。


「こんにちは、鳩原さん」

「ダンウィッチ! どうやって這入ったの?」


 待ち合わせ場所は校門付近だったはずだ。

 なんだったら部外者が学校の図書館を利用することの許可証さえまだ用意できていない。


「いえ、本当は這入るつもりなんてなかったんですよ。校門付近で待っていたら、ご年配の方が声に声をかけられたんですよ。『図書館を使いたいんですけど、どうやって這入ったらいいかわからなくて』と言ったら、入れてもらえたんです」


 ご年配の方……、教職員だと思うがいったい誰だろうか。人数が多いのでわからない。

 学ぼうとする者を歓迎するのがこの学校である。

 実際の教育体制とは噛み合っていないが、学校の方針は創設当時から変わっていない。

『図書館を使いたいという子供がいる』という話をして許可証をもらおうと思っていたので、まあ、結果的には同じだ。


「まだぜんぜん授業中だったので、ここで待たせていただきました」

 ダンウィッチの手元にあるのはアイスココアだった。


「早くに這入れたなら先に図書館に行けばよかったじゃないか」

「入れ違いになったら大変じゃないですか。それに、待ち合わせをしたんですから。そんな先に行けばいいなんて、寂しいことを言わないでくださいよ」

 それはまあ、確かに。

 失言だった。


「だとしても――防犯意識が甘いですね」

 手元にあるアイスココアをストローですすり、ストローを歯で噛んで少女らしくなく笑う。

「私が子供だから許してもらえたんでしょうか」

「まあ、よくも悪くも外面はいい学校だからな」


「それにしても、すごいですね。この学校。遠目に見ていたときも学校に侵入したときもすごい建物だなと思っていましたけど、綺麗な建物ですね。素晴らしいですね、私の世界では無機質な建物ばかりなので」

 それと廃墟――と呟いたところで、アイスココアを飲み切った。



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