第二章 極彩色の泡 Night Watch
第04話 侵入者(1)
1.
アラディア魔法学校には防犯用魔法が備えられている。
それは侵入者を発見次第に、『打ち上げ花火同然の閃光と爆音を放つことで危険を報せる』というものである。
これらの防犯については。学校側が専用業者を雇っている。
防犯について生徒たちにも理解を深めてもらうための取り組みとして、生徒会が中心になって行っている防犯委員会という活動がある。
それの担当者が副会長――ハウス・スチュワードである。
彼女は現生徒会の副会長にして、次期生徒会長であると言われている。
高い責任感と正義感を持つ人物である。
彼女はこの防犯に関する取り組みを始めてから、この学校に備えつけられている防犯魔法だけでは不十分だと感じていた。
「防犯用魔法は本当の危険を報せるんだから。そんなの遅いでしょ」
副会長が防犯委員会でそれを提案し、生徒たちはそれに頷いた。
専用業者に相談した上で、防犯委員会内で作った感知用魔法を学校の何箇所かに設置させてもらった。
ある日の夜のことである――鳩原とダンウィッチが出会う、ほんの十数分前のことである。
学校に仕掛けてある感知用魔法に反応があった。
『学校の外側から内側に消灯時間後に侵入者があった場合に反応する』ようになっている。
それは侵入者側には伝わらず、担当者であるハウスの元に届くようになっている。
感知した場合、ハウスの眠る枕元にあるランプの豆電球が、かちかちっ、と点灯する。か弱い灯りだが、神経質なハウスの目を覚まさせるには十分だった。
ぱちり、と。
今まで目を瞑って寝たふりをしていたんじゃないかと思うような目覚めだった。
ベッドから降りて、部屋を出る。この数秒間で部屋着から制服姿に着替えていた。入口の壁にかけてある箒を手に取って、寮の二階にある飛行用の窓を開いて――飛び立った。
一分とかかっていない、圧倒的な速さだった。
それを可能とさせているのは、もちろん――魔法があってのことだ。
(感知したのは、あっちのほうね)
学校の敷地内はかなり広い。
こうして
学校の敷地は広い、周りには森林に囲われているので野生動物の可能性はあるが、人間と野生動物を誤って感知はしないように工夫している。『消灯後の時間から夜明けまでの時間』に定めていて、感知した物体の大きさや、心拍数や脈拍などから、それが人間であるかどうかを判断して感知している。
(反応があったのは北、植物園がある辺りね。校舎からは離れている)
校舎と同じくらいの高さを、自動車と同じくらいの速度で飛行できるのはハウスが第一種魔法運転免許を取得しているからである。
さっきまで降っていた
びゅうう、と吹いている風は冷たい。周囲の空気はひどく冷たい。
寒くても弱音を吐かず、それをぐっと堪えるくらいの辛抱強さがハウスにはある。
植物園にやってきて、反応のあった学校の外壁の辺りに移動する。
この辺りの外壁には植物が使われている。魔法によって
その一箇所が、枯れていた。
小動物くらいならば、あるいは小柄な人間なら通れるくらいの隙間ができていた。
(この枯れ方は……除草剤を
この『侵入者』が大きい動物ではなく、この時間帯にうろうろしていた生徒が誤って感知魔法に反応してしまったのではなく――何か企みの元で行動しているのだとハウスは確信した。
(まあ、どうせ、ドロップアウトの連中でしょうね――どうして、いえ)
この寒さがハウスの思考を冷静にさせる。
どうしてこんなことをしたのか捕まえて聞き出せばいい。
本心を喋るとは限らないので、聞き出す必要もないとも言えるが……何にしても今ハウスが考える必要のないことだ。
(理由なんてわざわざこちらが考えなくていい――)
腰のベルト部分から杖を抜く。
『かちん』――という音と同時に、杖の先端から光が放たれた。その光は球体でふわふわと浮いていて、周囲を明るく照らした。
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