第86話

 俺たちの周囲から、外灯の明かりが徐々に消えていった。

 真っ暗になっていく大通りを、俺たちは戸惑いながら走って行く。

 ビュー、ビュー、と、吹いていた生暖かい風も、いつの間にか止んでいた。


「シロ! 頼む! 八天商店街まで走ってくれ!!」


「ニャ? ニャー!!」


 シロは大通りを八天商店街まで、まっすぐ走って行った。俺は、夜道をシロが八天商店街まで、安全な通路で導いてくれているかのような気がした。

 

 俺たちは、必死にシロを追い掛けた。


 街の至る所から、獣のような獣じゃないような生き物の咆哮がする。

 胸のざわざわ感が酷くなって来た。

 一本の角が生えた鬼や、鼻の長い天狗などの妖怪の大きな影が飲食店や本屋、ビルなどの窓に映っていた。


「まるで、百鬼夜行じゃないか?! 音星! 全力ダッシュだ!!」

「はい!」


 全速力でシロを追い掛けると、目の前に明かりが浮かんだ。


 八天商店街のスポーツ用品店は、まだ開いていた。

 店内に入ると、シロはあくびをしながら、玄関ドアの前で横になった。


「ふぅーー、危なかった……」

「ええ。何が起きるか、何が起きているのか、さっぱりわかりませんが、危ないところでしたね」

「帰りは気を付けようよ」

「ええ。このスポーツ用品店でお買い物をしたら、すぐ外で八大地獄へ行きましょう」


「いらっしゃい」


 レジにはしがないおじさんがいて、俺たちを終始穴の開くほど見ていた。

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