第79話

「お! シロ!」

「私たちを、わざわざ迎えに来てくれたようですね」 


 ニャー……?


 シロは俺たちの周囲を嗅ぎ回してきた。フンフンと鼻を鳴らして、小首をかしげる。それから、シロはフーッ、と威嚇した。


「うん? シロ?」

「どうしたのでしょう?」


 シロの行動を疑問に思っていると、後ろにいるコンビニの店員もこちらを怪訝に見ていた。


 うん??


 ……クンクン。

 

 俺は自分の腕の臭いをかいだ。


「あー!!」


 そういえば、俺たちは地獄で血の池に頭から突っ込んだんだった。そのせいで、身体中から血の臭いが強烈になっているんだろう。


「音星! おじさんとおばさんの民宿まで全力ダッシュだ!」

「はい?」


 俺はシロを抱えると、買ったばかりのアイスをクーラーバッグに入れ、音星の手を引っ張って全速力で民宿まで走った。


 裏通りをグングンと走ると、民宿の玄関に霧木さんがガムを噛んでいた。なんだか、その姿はタバコを外で吸っている不良みたいだった。でも、どこか霧木さんは学校の先生なんだよな。


「あ。お帰りなさい」

「ただいま!」

「ただいま戻りました!」


 俺は急いで民宿の玄関先で靴を脱いだ。隣の音星も草履を脱いでいた。


「あれれ?? 火端くん? それと音星さん? 何か臭いんだけど……まるで、超リアルなホラー映画館からの帰りみたいな……」

「え?! ごめんよ! 急いでるんだ!!」

「火端さん! すぐにお風呂へ行きましょう!」


 俺は民宿の中に入ると、一目散に風呂場へと走った。

 俺の後に音星も続く。

 おじさんとおばさんに今の俺たちの身体の臭いをかがれると、確実に仰天して卒倒でもしてしまうだろうな。


「あ、二人共もうそんな仲なのね。お熱いのねー……ごちそうさま」


「ちがーう!!」


 俺は赤面して叫んだ。



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