第78話

――――


「どっわー、ここもあっついなあ!」

「ええ……良かった……間一髪でしたね。危うく熱でやられてしまうところでしたね」


 真夏の八天街のちょうど昼下がりに、交差点の電信柱の傍に俺たちはいた。


 赤信号の交差点から八天駅前のロータリーは、何故か自動車で混雑している。大通りを行く通行人の雑踏も殊の外いそいそとしているような錯覚を覚えた。


 何もかも夏のうだるような暑さが包んでいた。


「火端さん? さすがにこうも暑さが続くと辛くなりますよね。アイスでも食べませんか?」

「お、おう」


 音星の誘いで、俺は交差点を突き進み裏通りにある民宿の近くにあるコンビニへと向かった。街路樹の日陰ばかりを歩いて、コンビニでアイスクリームを買ってレジを済ましていると、店のガラス製の自動扉前にシロが座っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る