第51話

 ちょうど、火のついた釜土と釜土の間で俺は倒れたいた。


「あ! あぶねえ兄貴!」


 弥生の叫び声と共に、俺の頬が今度は蹴られた。手加減して軽く蹴られたようだったけど、俺の首は強引に右の方へ向く。


「痛ってーーー! う、うわ!! あ、熱い!!」

「大丈夫か?! う、うわ!!」


 俺は首だけがちょうど、右を向いた状態になったけど、途端に頭の右後ろで、ジュッっと、焼ける音がしたかと思うと、恐ろしい高温が頭や髪の毛を襲いだした。


「うわーーーー!!」

「兄貴ー!!」


 熱湯がジワリと後頭部を焼く!!

 俺の体全体から脂汗が噴き出た!!


 熱湯の恐ろしい熱さで、俺は悶絶した。


「弥生さん! せいの! で、いきますよ!!」

「おお! 兄貴引っ張るぞ! せいの!」


 頭の真上からいつの間にか音星の声が聞こえ。それから弥生の振り絞った声と共に、俺の身体が釜土と釜土の間から思いっ切り引っ張りだされる。


 俺は二人に引っ張られたお蔭で、煮え湯の高熱からなんとか逃げ出せた。


 焦げた頭を抑えて、なんとか立ち上がろうと上半身を起こすと、さっきまでいた釜土と釜土の間には、空からの煮え湯に許容量を超えたたくさんの釜土から、煮え湯が地面にまで溢れだしているところだった。


 ジュウ。ジュウ。ジュウ。と、真っ赤な地面が焼けて、大量の湯気が発生している。


 音星もシロも半透明な弥生も、俺も倒れそうなくらいの大汗を掻いていた。


 こりゃ、正真正銘の本物の地獄だ!


 早く! 妹を連れてみんなで逃げ出さないと!!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る