第48話

「あ! 兄貴?!」

「弥生?!」


 火のついていない釜土から、10メートルほど西の方に妹が半透明だが生前の姿で立っている。だが、俺が何か言おうとしたら、妹は更に西の方へ逃げだしてしまった。


「あ、弥生さん? 火端さん! あれ!」

「え?!」


 見ると、ここから西の方。妹が逃げた方に、湯気で見えにくかったけど、確かに火のついた釜土に挟まるようにポツンと古井戸がある。


 古井戸は後回しで、なんとしても急いで妹を追わないと……。


 俺は走った。

 足は妹よりも速い方だ。

 グングンと妹を追い掛ける。


「ま! 待ってくれ弥生!! お兄ちゃん心配してるんだぞ!!」


 火のついた釜土を避け、高温の湯気を払い。俺は妹を追った。

 前方を必死に逃げる妹は、何か叫んでいる。

 俺には、それが……。


「なんで? どうして? こんなところに兄貴がいるんだよーーー!」


 っと、あの妹のことだからそう聞こえたけど、定かではなかった。

 周囲の悲鳴で、よく聞こえないんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る