第35話 地獄に仏?

 白猫は俺の顔を見るなり、ニャーと鳴いて近づいてきて、足元で頬を摺り寄せてじゃれはじめてしまった。


 うーん。


 あ、古葉さんの猫屋でか?!


 この猫の所在は猫屋だと知ると、また猫屋へ戻らなければいけない。今度は猫を連れ、俺は猫屋へ元来た道を歩いて行った。


 ただのガキの遣いだと思ったら、色々あったな……。


 ニャー……。


 猫屋へ戻ると、店内では、古葉さんが神妙な顔をしてショーケースを覗いていた。古葉さんの後ろから声を掛けると、いきなり驚きの声があがった。


「わっ! わーー! って、火端か……。驚かすなよ……。あれ? その猫! その猫!」

「うん。ああ、この猫。いつの間にかついて来たんだよ」

「お前……一番。厄介な猫を……」

「へ?」

「その猫はなあ、飼い主によく似た奴を見つけると、どこまでも着いていってしまうんだ。この間なんかなあ……」

「俺、買うよ。金はこの旅が終わったらでいいかな?」

「うえ! ……よし! 売った!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る