第12話 それは理《ことわり》? 

「うぐっ……」


 俺は腹が減っているのに、完全に食欲がなくなっていた。

 音星は静かに目を瞑っている。


 辺りは地獄の鬼(獄卒)たちの食堂だった。

 血の滴る食材が粗雑な木の机の上に散乱し、至る所に骨が散らばっている。


 牛、馬、鳥などに混じって、明らかに人肉だとわかるものもある。人間の腕や足が机の上に無造作に置いてあった。


「ほら、足元気をつけろよ。そこに……岩があるから」


 本当は人の頭だったが、俺は嘘をついて音星をこの食堂の出入り口へと歩かせていった。


 音星は目を瞑ったままニコリとこちらに笑った。

 また等活地獄の針山が見えるところへ出ると、俺は今度はここで本格的に妹を探そうとした。


「ええ、そうしましょう。あ、でも。火端さん。その前にあそこでお昼にしませんか?」


 音星は等活地獄の隅っこにある綺麗な岩間を指差した。

 

「ああ……」

 

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