勇気と巫女の八大地獄巡り 

主道 学

第0話 はじまり

 キュルキュルと、真夜中のアスファルトを激しく摩耗するタイヤ。

 対向車のライトに映える大量の灰色の煙を吐き出し。

 片側二車線の道路を右へ左へと突っ走る。


 そんな危険な自動車が一台あった。


 白線もお構いなく走るその車は、ついに車体が大幅にひしゃげてしまった。


 対向車線を走る普通自動車との正面衝突だ。


――――

 

 テレビではちょっとしたトレンドだ。

 凄惨な酔っ払い運転による交通事故だった。

 片方の運転手は即死。

 もう片方は俺の妹だ。

 

 妹は軽傷だった。


 妹はその後、運転手の遺体をガードレールから投げ落として、飲酒運転や死体遺棄などのてんこ盛りの罪で指名手配された。まもなく、無残に首を吊った状態で発見される。


 だが、妹は酒は飲まない。

 いや、まったく飲めないのだ。


 誰かに無理やり飲まされたのだろうと俺は思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る