第5話:無詠唱と双子の妹

 今俺は自分の寝室にいる。


 午後、使いにくい魔法を除き、残りの魔法はすべて覚えた。

 魔法の教本の内容は正しいと思った。昼ごはんを食べて書齋に戻り、すこし休むと確かに魔力が少し回復したような気がしたからだ。


 やはり正しかった、この世界の書籍は。

 思わず苦笑した。


 俺の魔力は完全に回復した。

 では、やってみよう。俺の魔力値はどうなったのか確かめてみたい。


 椅子を窓のところまで押していき、椅子に登って窓を開けた。

 飛び降りてベッドに戻って座った。


 さあ、始めよう。


 右手を上げた。


「水よ、刃となって我が敵を斬れ!私に敵を斬る力を与えよ、神様!水属性下級魔法 《水刃》発動!」


 《水刃》の呪文を詠唱した。


 魔法陣が現れて水は刃のようになり、高速で前へ飛んでいった。


 それから、魔力値はどうなるのを確認するついでに、午前と午後に覚えた魔法を復習した。

 15回目の詠唱が終わり、手を下ろした。


 まずい、喉が渇いた。


 立て続けに呪文を詠唱して、喉が渇いてしまった。


 出来れば、詠唱せずに済ませたい。

 それに、俺はあることに気づいた。魔法を発動するのは、単に魔力を魔法に変換するだけで、実は詠唱とは関係がないようだ。


 ただ魔力の流れを完全に自分のものにできれば、詠唱なしで魔法を発動できるはずではないか。


 考えるのは簡単だ、でもそれを行うのは難しいかな。

 どうやったらいいかな?

 ……まあ、なんとかなるさ。


 まず目を閉じて、精神を集中すること。

 そして右手をまっすぐに伸ばした。


 魔力をゆっくりと右手に集めてみたけれど、魔力が流れる気配は全く感じられなかった。

 失敗したようだ。


 必ずできる!なら、もう一回やってみよう。


 また右手をまっすぐに伸ばした。


 流れよ!魔力!


「……っ」


 でも、まったく反応がなかった。


 まさか!俺の考えは間違っているのか?

 ―――くそっ!信じられない。


 また右手を上げた。


 魔力!流れてくれ!


「……っ」


 と、何も起こらなかった。


 ちくしょう!流れて、魔力!


「……っ」


 流れて、流れて、流れて、頼む!


 ……結果、同様に何も起こらなかった。


 どうやら、俺の考えは完全に間違っていた。……いいや、俺があまりにも急いだせいだ。魔力の流れを完全にコントロールできなかったからだ。


 じゃ、一回検証してみよう。また失敗したなら、俺は自分の考えが間違っていると認める。


 目を閉じて、精神集中して、心を無にする。


 ゆっくりと右手を上げた。


 息を潜めると、全身に魔力を感じた。


 すぐに、体内に何かが流れているように感じた。


 これが魔力の流れだろ?


 魔力を右手に集めてみると、手の平に魔法陣が現れた。

 その勢いで 《水刃》を発動した。

 《水刃》は飛ぶように前へ。


 成功した!詠唱することなく魔法を発動できた!


 この光景を見ると、とても嬉しくなった。


 そしてこのまま十九回まで詠唱なしで魔法を練習した。


 だが、魔法を実験する時間を短縮したい。

 なので、俺は両手を上げた。

 同時に両手で魔法を発動できるか確かめてみたい。


 両手に魔力を注入してみると、両の手の平に魔法陣が現れた。


 よし!成功だ!


 《水之矢》発動!


 両手にそれぞれ一つの 《水之矢》が生成して発射した。


 これを見て、二つの魔法を同時に発動でき、かつ詠唱しなくてもいいなんて、『すごいぞ、俺は』と思った。


 俺は自分の才能に感心せずにはいられなかった。


 次に両手で二つの異なる魔法を発動してみよう!


 さっきのように両手に魔力を注ぐと、魔法陣が現れた。


 左手で 《水弾》を発動し、右手で 《氷弾》を発動してみる。


 《水弾》、《氷弾》発動!


 左手では水を弾丸のように変え、右手では水が氷になって弾丸のようになる。

 それから一緒に前に発射した。


 俺は魔法の天才かもしれない。


 でも、俺の魔力はそろそろ限界でしょ?

 魔力値が等比数列で上昇する推定によると、魔法はあと1回発動できる。

 しかし、思い出すと、昨日窓が閉まっておらず、椅子が元の位置に戻っていなかったので、リリに疑われた。


 何か方法があるの?

 うんん……あった!


 まず窓を閉じて、椅子を元の所に戻した。

 そのうえで 《水強化》を発動すること。


 こうすれば、部屋をめちゃくちゃにすることはない。


 《水強化》は午後に学んだ補助魔法だ。

 効果は文字通り、すべての水属性の型の作用をアップすることだ。


 でも、あの教本の組み立てはやはり間違っていた。

 補助魔法が終わったらまた攻撃魔法なんて……っ。


 ……まあ、まず自分の魔力値はどれだけになるかを確認することが大切だ。


 《水強化》発動!


 突然、力が湧いてきたような気がした。

 だが、間もなく、俺の魔力はなくなり、だんだん眠くなった。


 もうわかった。なんだ、魔力値が等比数列で上昇している。


 もう結果が出た以上、安心だ。


 ベッドに横になって寝た。



 ✭✭✭✭✭



 魔力値の上昇形式を知ってから、絶えず努力して自分の魔力値を向上させた。

 現在は196608回の下級魔法が発動できるようになった。


 しかし、自分の魔力値を高めただけではなく、さらにこの世界の書籍を研究した。


 今は朝と午後だけでなく深夜にも本を読んだが、本の中で多くの誤りを発見した。

 誤りを修正して正確な知識を吸収した。


 時々夜中に人のいない広々とした場所に行くこともあって、屋敷で使うのが難しい魔法を勉強した。

 俺は全属性の下級魔法ができる。


 この世界の魔法属性は水・火・風・岩・土・草・雷・光・闇・無の10種類だ。

 合計10つの属性。


 無属性下級魔法 《鑑定》を発動したことがあって自分自身を鑑定してみた。


 ――――――――――――――――――――――

【ノルス・ガルメス】

 称号:ガルメス公爵家長男・転生者・【非表示】

 年齢:三歳

 性別:男


 レベル:1/∞

 HP 350/350   

 MP 182725/983040

 

 力  C   水 D

 体力 B   火 D

 知性 S   風 D

 防御 D   岩 D

 速さ B   土 D

 精神 A   草 D

 器用 S   雷 D

 運  A   光 D

        闇 D

        無 D


 固有スキル:

 《治療魔法下級》LV.2 《無詠唱》LV.4 《多重詠唱》LV.2 《下級魔法》LV.2

 ――――――――――――――――――――――


 目の前に半透明な鑑定画面が現れた。

 俺の知っている限りでは、アルファベットと数字は自分の能力レベルを表していた。


 アルファベット表記で9つの能力レベルがあった。低い順に並べたら、F・E・D・C・B・A・S・SS・SSS。

 数字では10つの能力レベルがあった。最高レベルはLV.10。


 俺の三つの固有スキルは勉強によって得られたようだ。

 下級魔法を1回発動するたびに、5ポイントの魔力値が差し引かれるようだ。


 でも、俺が気になるのは称号だった。【非表示】?なんだ、こりゃ?

 いくら考えても、そうなるわけが思い当たらなかった。

 この称号は、俺が突然この世界に転生したことと関係があるのではないか?


 そして、ある日の真夜中、俺は本を読み終わって、それを書斎に戻した。

 廊下が暗いので、《光球》を発動した。

 廊下を歩いていると、両親の寝室から変な声が聞こえてきた。


「あっ♡」


 声が聞こえたので、すぐに足を止めた。


 なんだよ、あの声は?

 声は両親の部屋から聞こえてきたらしい。


 両親の部屋のドアに寄って、また変な声が聞こえた。


 なるほど、彼らはセックスをしている。

 いいな、俺もセックスしたい。


 前世では俺は童貞だった……。

 それを思い出したら泣きたくなった。


 もう決めた!権力だけではなく女も手に入れてやる。


 まあっ、まず本を書斎に戻すのが大切だ。


 ……でも、ちょっと待てぇ!もし俺に兄弟ができたら、大変だ!そんな事態を阻止しなきゃ!


 しかし、どうやって?

 直接突入することは不可能でしょ!まして俺は手に本を持っている。

 それに彼らに疑われる可能性がある……。


 クッ、クソォ!



 ✭✭✭✭✭



 その後、お母さんはやはり妊娠した。

 その事実を知り、自分の公爵相続権を固めるために頑張らなければと必死に勉強した。


 そのため、毎日のように徹夜した。

 前世では徹夜など俺にとって日常茶飯事だった。

 警察に逮捕されるのを避けたために、俺はよく一晩中眠らずに逃亡したものだ。


 下級魔法は熟練したので、中級魔法を習い始めた。

 中級魔法を1回発動するたびに、1000ポイントの魔力値が差し引かれるようだ。


 十分な魔力を持って上級魔法を発動できるためにさらに自分の魔力値を上昇させた。

 その結果、魔力値は983040から1006632960になった。

 しかも今では10つの魔法を同時に発動できるようになった。


 すでにお母さんは出産を終えた。

 双子の妹だ。


 俺の心に危機意識が生まれた。

 ―――彼女らは殺すべき。


 そこで俺は決心した。彼女らをする。

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