現代ダンジョンで最強ニンジャだった俺は異世界転移して奴隷を救い、くノ一村をつくって人類を支配する魔王軍と全面対決します。……やりすぎて魔王以上に恐れられてるんですけど?

羽黒楓@借金ダンジョン発売中

第1話 人類最強にして最良のニンジャ、異世界に降り立つ。

 二十一世紀地球。

 現代の世に突然現れた、摩訶不思議な存在、ダンジョン。

 ダンジョン内にはマナと呼ばれる不可思議な物質が満ちており、そのマナを含む空気を一定時間以上体内に取り込んだ者はなんらかの不思議な力を得られる。

 しかし、それだけではその力を十分に発揮させることはできない。

 マナを得た上で、血のにじむような訓練と命をかけた実戦を積み重ねることによって、スキルと呼ばれる体系的な技術を身につけることができるのだ。

 ある者は戦士として剣で岩をも砕く力を、ある者は攻撃魔術士として攻撃魔法を、ある者は治癒魔術士として治癒魔法を、ある者はあらゆる罠を突破する盗賊スキルなんてのをもってたりしていた。


 そして俺は。

 ニンジャとしてのスキルを得て研鑽を積んだのだ。


 様々なダンジョンに挑み、攻略してきた俺は、いつしか世界最強のニンジャと呼ばれるようになっていた。

 そして今回ついに、俺たちパーティは世界最難関と言われたウルトラSSS級ダンジョン、新潟県胎内高原ダンジョンの攻略に成功したのだ。

 近くのホテルで行った打ち上げは豪華なものだった。


 湧き出るぬるぬるとした感触の天然温泉を楽しんだあとは飲めや歌えやの大騒ぎ。


 山菜採りという地味な趣味を持っていた俺は、ちょうど山の中のホテルだったから近くからきのこを取ってきてほんとはだめなんだろうけど宴会料理についてきた固形燃料の鍋に勝手に入れて食べた。

 そして俺は毒キノコの毒にあたって死んだのだった。

 ダンジョン内なら毒無効の術を使っているんだが、なにしろ酔っぱらっていたから……。

 新潟は日本酒がうますぎるのが悪い。


     ★


 そして俺が目を覚ますと、そこは異世界だった。

 草原の真ん中だ。太陽の光の色が地球とは違うから、異世界で間違いないだろう。

 俺は死んだときと同じニンジャの黒装束のまま。

 なんでこんな格好で飲んでたかというとピンクコンパニオンの女の子にリクエストされたからだ。あと無限風呂敷も持っているな、これがあればなにも困らないだろう。


「ぐぎゃぎょ!?」


 なんだ? いきなり数匹の緑色の怪物が目の前で叫んでるぞ?

 突然現れた俺にびっくりしているみたいだ。

 人型のモンスター。こいつら、人間よりも小柄だが、どこかしら目はギョロっとしていてでかい牙が見える。

 えーと、ダンジョンでも見たことあるな、コボルドってモンスターそっくりだ。

 そしてそのコボルドたちは鎖を引っ張っており、その先には――首輪をつけた人間の女の子が二人。


「……首輪?」


 なんだこれ、俺はどういう場面に出くわしたんだ?


「ぎゃぎょ!? ぐぎゃらどばとどがっけぐどどっど?」


 コボルドが俺を指さしてなにか言う。

 全然知らない言語だからさっぱりわからない。


「はあらかどあおあふうぱぱらぇいええうっとみい」

「みはろくとからたぽっぽとてたれい」


 女の子たちもしゃべってるけどわからん。

 しかし、俺は人類最高のニンジャ。

 このくらいはなんとでもなるのだ。

 知性のあるモンスターと渡り合うための忍術はきちんと習得してある。

 重ねて言うが、俺は世界最強にして最良のニンジャなのだ。

 俺は手で印を結ぶ。


忍忍ニンニン! 忍法、精神感応の術! 忍!」


 とたんに俺の全身が稲妻に打たれかのようにしびれる。

 するとこいつらの言うことが理解できるようになった。


「こいつ、どこから出てきたんだ?」


 コボルドがそう言う。


「男じゃねえか! 価値がないな、ここで殺しちまおうぜ兄貴」

「そうだな、殺すか」


 物騒な会話だな、まあモンスターなんてこんなもんだろ、俺の実力も知らずに。


「逃げて! 逃げてください!」


 女の子が叫ぶ。

 よく見ると、この子、すげえ美人だなあ。

 長いポニーテールの黒髪に大きくて黒い瞳、きりっとした眉に白い肌。めちゃくちゃかわいいぞ。

 着ているものは粗末な布一枚だけど……。

 そしてもう一人の方もかなりの美少女。

 こっちはショートカットの髪の毛、青い瞳に薄い唇。もうね、肌の色がやばいくらい透明感のある白なの。すげえ、超美少女じゃん。


「早く! 早く逃げて~~~~~!!!」


 悲鳴のような叫びをあげるポニーテールの女の子。


「人が死ぬとこ見たくないなー。人の血が出るの、苦手なんだよなー」


 ぼーっとしたようなハスキーボイスでそう言うショートカットの子。

 そして鉈のような武器を取り出して俺に襲いかかろうとする5匹のコボルド、うーん、とりあえずよくわからんな。


「ええと、君、ちょっと聞くけど、このモンスターは人間の敵? でいいの?」


 俺が尋ねると、ポニーテールの子が、


「そうでしたけど! もう人類は魔族に負けたんです! 早く! 逃げて! 殺されますよ!」


 そうでしたけど? 人類は魔族に負けた?

 ここはいったいどういう世界なんだ?

 ま、とりあえず敵なんだな、やっつけとくか。

 俺は胸の前で指を組んで印を結ぶ。


忍忍ニンニン! 忍術、火遁の術!」


 とたんに俺の目の前に直径5メートルはあろうかという渦巻く炎が現れ――。

 あっというまにコボルドたちを包み込んで焼き尽くした。


「ぐぎゃーーーーー!!」


 モンスターの叫び声はいつ聞いても心地がいい。

 スキルはカンスト、実戦経験も世界一、人類史上最強ニンジャと呼ばれたこの俺にしてみればコボルドごとき、術を使うまでもないほどだ。


「え……なんですかこれ。魔法? でも見たこともない……」


 ポニーテールの子が呆然として言う。

 一方、ショートカットの子は、


「うひゃーーーっ! すごい、すごい、すごい、あっという間だ! こんな強い人間初めて見たよっ!」


 大喜びしている。

 さて。

 俺は女の子たちに向き直って聞いた。




「うーん、この世界はなにがどうなってるんだ?」

 

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