〇〇〇〇〇〇

 ジュンの話では、業者は日付が変わったころに来るらしい。


 子どもたちは寝ている時間だし、夜のママロボットは日中に比べると、仕事が少ないからだ。


「前もそうだった」


 ジュンは、業者を撃退するのはこれで二度目らしい。


 その時は上の先輩とふたりで協力して、ママロボットの製造月日をごまかして追い払ったそうだ。(ママロボットの左肩後ろには製造月日のバーコードがついている。あの手この手で油性ペンを使って読み取れなくした)


「でも、今回は同じ手は使えないだろうな……」


「どうするつもりなの?」


 あたしはジュンと一緒に、明かりの落ちた視聴覚室に隠れていた。


 この部屋はコンセントが多いので、いつもここで作業するらしい。


 ジュンはどこから持って来たのか、懐からにゅっとスパナを取り出した。


「いざとなったら、これで、業者の頭を……」


「ちょっと、やめてよ」


 ブンと殴る真似をされて、あたしは思わず身を引いた。


 ジュンは、ふふんと鼻を鳴らしてスパナをしまった。


「最終手段だよ。実際、なんとか交渉してみるしかないだろうな」


「大人相手にどうやって交渉するのよ……」


「シッ、誰か来る」


 廊下に面した窓で、懐中電灯の光が揺れている。


 台車を使う音に、あたしとジュンは顔を見合わせた。


 業者が、電源を切ったママを談話室まで運んできたのだ。

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