第18話 第1回、冬のファッションショー

唐突に始まったファッションショー。

司会を務めるのは私、風花でございます!

さぁさぁ、今回はネットで購入しました計5組の服……可愛いのでしょうか!? いや、絶対可愛いけど……

さ、さっそく始めましょー!


「なにやってんの、ねぇね……」


そういう綾花の前にあったのは、トイレットペーパーの芯を持ちながらよく分からないことを叫ぶ風花の姿だった。


「いやー、秋のファッションショーの時は店員さんが盛り上げてくれたからね〜、今日は私が」

「ま、まぁ、いいから、それより早く服ちょうだい!」

「あっ、うん、これ……」


と言い終わる頃にはもう既に着替え始めようとしていた。


「いや、速いな……」


まるでひったくりの如く服をかっさらって、風花のことを気にせず着替える綾花。


(この前好きって言ったよね……? もうちょっとくらい意識してくれても……)


いやいや、妹相手に何を考えているんだと頭を振る。


「それでは綾花さんの入場です!」


さっきまでの考えを誤魔化すかのように唐突に叫ぶ。


「いや、入場も何ももうここにいるじゃん」

「細かいことはいいの〜」


ということで……



エントリーナンバー1番!

黒のTシャツに白のベスト!

スカートは寒いか? 否! もちろん中にズボンは履いてますよ〜

アクセントには赤のリボンを!

いやぁ、可愛い!

シンプル可愛い!

ガーリーだ!


エントリーナンバー2番!

ベージュの落ち着いたニットカーデと派手なジーンズ!

シンプル可愛い!

ほんとに可愛い!

とにかく可愛い!


エントリーナンバー3番!

有名なスポーツブランドのスウェット! ハイネックインナーを重ね着に!

さらにチェック柄のカーキーのズボンと!

ボーイッシュでかっこいい! そして可愛い!


エントリーナンバー4番!

ゴスロリ!

真っ黒、ふりふり! めちゃくちゃ可愛い!


「んと……ちょっと待ってねー」


と言って走り去る風花。

戻ってきた風花の手には……

メイクセットとヘアアイロンがあった。


・ ・ ・


「おっけ〜これで完璧!」


地雷メイク&縦ロールのゴスロリ綾花……

やっばい……かわいい。


パシャ……


「え? ねぇね何撮ってるの?」

「んん? 可愛いから待ち受け画面にしようかなって〜」

「やめぃ!」


頬を赤らめ叫ぶ綾花。やっぱり可愛い。


それではいよいよ最後となりました……

エントリーナンバー5番!


「ちょっと待って……」


綾花の声が部屋に響く。


「メイクは落としたけど縦ロール直らない……」

「ん? いいよ? それ想定して服買ってるから」

「いや、完璧かよ……」

「いいから、早く着替えて」

「あっ、うん……」


これだけ会話をしていたらなるべく見ないようにしていてもどうしても見てしまう。


「ピンク……」

(あっ、言っちゃった……)

「!」

「何見てんのよ変態!」


綾花の罵声が部屋いっぱいに響いた。


「そ、それでは……仕切り直して……」


エントリーナンバー5番!

メイド服です!

いやぁ、めっちゃ家事できそう!

(この前ブラックホール・オムライス作ってたけどな!)

掃除も出来そうだなぁ!

(包丁落としまくったせいで床穴だらけなったけどな!)

女子力高そう!

(元男だけどな!)

とにかく可愛い!

(私より可愛いの腹立つけどな!)

めっちゃ好き!

(ちょっとは意識しやがれー!)


見事にツッコミ不在だった。

まぁ、心の声だしね?


「ね、ねぇね……これはちょっと恥ずかしい……あとこの服めっちゃ寒いし……」

「大丈夫〜、可愛いからいいの〜」

「え、えぇ……」


パシャシャシャシャシャシャ……


スマホのカメラを連射する音が部屋に響く。

めちゃくちゃうるさい。


「ね、ねぇね……恥ずかしい……」


綾花の顔が火照る……

ちなみにこの時の体温は40度だった。

風花……写真も程々にね……

そんなこんなで幕を閉じた第1回、冬のファッションショーだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る