第13話 百合……薔薇……

しばらく歩いた2人は気づいたら目的地の本屋さんの前についていた。


「ねぇねー、ここ?」

「そうそう、もうついちゃったね〜」

「早かったね〜」

「ね〜」


そんなほっこりとしたやり取りをする2人。

風花がエスコートをする。


「それじゃあ行こっか?」

「うん、行こー!」


手を繋ぎながら入店。


「わぁ、すごい……本の匂いがする……」

「あれ? あんた本屋来るの初めてだっけ?」

「うん」


今まで引きこもっていた綾花は、本が欲しければ風花に連絡して買ってきてもらっていたので、自分で本屋に本を買いに来るのは今回が初めてだった。


「そっか、ついてきて〜」


そう言って風花が真っ先に向かったのは……


「ねぇね? これなに?」

「検索機」

「洗濯機?」

「違うわ! 検・索・機!」

「あぁ、検索機ね」


そう。検索機だ。

そして風花は検索機の前に立つと、雰囲気が別人のように変わる。


スタタタタタタタタ……


目にも止まらぬ速さで文字を打つ。

その間10秒。7冊の本の位置を調べた。


「いや、速すぎでしょ」

「ん? これくらい普通よー?」


風花の発言に恐怖を覚える綾花だった。


「それじゃあ、行こっか?」

「う、うん……」


とても広い店内にも関わらず迷うことなく本のもとまで歩いていく。


「あれ? ここって新しくできた本屋だよね……」


なぜ風花は新しくできた本屋さんの本の位置を把握しているのか……普通棚の位置までは分からないはず……

またもや恐怖を覚える綾花。


「えぇ? あぁ、女の勘ってやつだよ」


無駄にドヤ顔でキメる。


「いや、勘凄すぎだろ」

「本を愛すれば求める本の位置が匂いだけで分かるのだよ」

「いや、女の勘じゃないんかよ!」

「あぁ、そうだった〜」


行動にも言動にも、一つ一つに恐怖を覚える綾花だった。


「ねぇ、綾花ー?」

「ん? 何?」

「百合漫画とりあえず7冊持ってきたけど他になんかいる?」

「別にいらなーい」

「そっか〜、これも要らないの〜?」


そう言う風花の手には、かつて風花のベッドの下に封印されていた伝説のあのBL漫画の2巻だった。


「そ、それは……あのBL漫画……」

「そう、まぁ薔薇だよ、薔薇」

「GLが百合でBLが薔薇だ!」

「じゃあ、それは伝説の薔薇漫画!」

「そうだー! さてさて、これはいらないのかな?」

「いるー!」

「そうかそうか、なら最新刊まで一気に買おう!」


に・ふ・ん・ご


「お待たせー!」

「え……」


風花が持っていたのは……

百合漫画15冊……

薔薇漫画15冊……


「えぇぇぇぇ!?」

「あの薔薇漫画そんなに出てるのー!?」

「うん、最新刊で16巻だよー」

「すっご……てかなんで百合漫画まで増えてるのさ?」

「えぇ? なんか面白そうやったから」

「まぁいいや、速く買うよ」

「は〜い、ちょっと待っててね〜」

「うん」


レジに駆けていく風花。

レジから店員さんの声が聞こえてくる。


「お会計の方21800円となります」

「おぉ、今回は安かったな!」


「はぁ……またやってるよ……」


呆れて遠い目をする綾花だった。


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