夢占い

@serinegi

第1話

 夢を見た。はじめが生きている夢。家でだらだらテレビを見ているそんな夢。もう二度と戻れないあの頃の夢だ。

 何故ならはじめはもうこの世にはいないから。

 

 9月の頭、夏が終わり風が冷たくなってきたなんでもない日、はじめは死んだ。死因は信号無視をしたトラックにはねられたことで、直ぐに救急車で運ばれたが、そのままはじめが目を覚ますことはなかった。

 はじめ以外にひかれた人はいなくて、トラックの運転手はそのままコンビニに突っ込んで死んだ。トラックの運送会社に調べが入ると過酷な労働環境であったことが判明し、少し騒ぎになった。そんな、ニュースで見たら次の日には忘れるような出来事で、俺が誰より愛した人はあっけなく帰らぬ人となった。

 

 俺は大学生になるまで恋というものをしたことがなかった。女といるより男友達と一緒に過ごしていた方が楽しいし、楽だと思っていたから。彼女なんていらねぇ。そう思っていたはずなのに、俺は大学に入学して早々に恋をした。俗に言う一目惚れってやつだった。次の講義のために大学の敷地を歩いている時、その人が目に入ったその瞬間、世界が止まった気がした。その人の周りだけが別世界のように見えて、特別に見えた。惚けた俺をその場にいた友達はからかってきたけどそれに構っている余裕はなくて、その人が見えなくなるまで見送った後、俺は叫ぶように聞いた。

 

「あの人、どこの学部だ!?」 

「おお、やっぱお前も男だなぁ。あの人は文学部だよ」

 

 ニヤニヤとこちらを小馬鹿にしたような態度にイラッとしたが、その時はそんなのどうでもよかった。

 

「名前、名前はわかるか?」

「一条はじめ。俺らの学年3つ上で、この大学のマドンナ」

 

 「はじめさんに惚れるなんて正統派だなお前」なんて言う友人はこの時ばかりはノイズでしかなかった。いや、情報提供者としては有能だったな。ありがとう。それだけ言って次の講義に早足で向かった。「おい待てよ」という声に対して振り返ることはなかった。

 

 あの日から俺の頭の中ははじめさんでいっぱいで、1日1回その後ろ姿だけでも見ることができたら、その日はもうなんだって頑張れた。そんな雲の上の存在に恋をしてしまった俺にチャンスがやってきたのはあれから3ヶ月後の事だった。

 

「合コンにはじめさんが来る!?」

「おう。お前もくるだろ?」

「行くに決まってるだろ!」

 

 そんな感じで決まった合コン。行けば結構な規模の合コンで割と人がたくさんいた。俺は1人で周りを見回して、見つけた。はじめさんだ。しかし見つけたは良いものの、やっぱりはじめさんは人気者で俺なんかが声をかけに行ける感じではなかった。でも俺は初恋ボーイ。無敵であった。

 

「こんにちは」

「こんにちは」

 

 よし。無視されてない。俺はそれだけで安堵した。

 

「俺、合コンって初めてなんですけど、いつもこんな感じなんですか?」

「うーん。私もあんまり合コン来ないからわかんないかも」

「そうなんですね〜。あ、ごめんなさい、自己紹介してなかったですね。俺、一ノ瀬奏斗って言います」

「私は一条はじめ。よろしくね」

「はじめさんいや、一条さん?」

 

 マズイ。さすがに攻めすぎたか? 初めましてで名前呼びはキモかったか? 俺の脳内は渦を巻いたが、はじめさんは柔らかい笑みを浮かべたままだった。

 

「どっちでもいいよ」

 

 よしきた! その言葉だけでグイグイ作戦は大成功を収めたことが確定した。

 

「じゃあ、はじめさんでもいいですか?」

「うん。じゃあ奏斗くん?」

「はい。あんま下の名前で呼ばれないんでなんか嬉しいっすね」

「あれ、一ノ瀬くんの方良かったかな?」

「いやいや全然嬉しいんでそのままで大丈夫っす」

 

 これはファーストコンタクトはもらっただろ。奏斗くんいただきました! そうテンションが上がる心は後ろに隠して、これはいける! と俺は次のステップに進んだ。

 

「あの、連絡先交換してもいいですか? あ、嫌なら全然大丈夫です」

「いいよ。交換しよ」

 

 QRコードを読み取ってとりあえずのスタンプ。この一大イベントに選ばれたのは柴犬のよろしくスタンプだった。これ持ってて良かった〜。初めましての人には必ず送るこのスタンプだが、この時俺は人生で一番この柴犬に感謝した。本当にありがとう。ちらっと見たこいつはいつもよりかわいく見えた。さて次の話題はどうしようかと悩んだその時、

 

「はじめー」

 

 遠くから女の人の声。ここで俺の時間は終わりらしかった。

 

「はーい。じゃあね」

「はい。また機会があれば」

 

 少し頭を下げつつ別れを告げた。ふぅ。危ない、後ちょっと切り出すのが遅れたら連絡先交換出来ないとこだったと自分の仕事ぶりに拍手を送った。そして、人のいない所に行き、1人になったところで興奮を抑えるために深呼吸をした。すぅー、ふぅー。冷静になって考えてみてもめっちゃ大進歩じゃね? 連絡先ゲットとかやばくね? おいおいやればできるんじゃねえか俺。その時の俺の心はパーティー状態。その後の合コンは消化試合みたいな感じで過ごして、二次会も行かなかった。はじめさんも行かないっぽかったから。その晩は眠れなかった。

 

 

 そしてあの合コンから1週間が経過した。にも関わらず、俺とはじめさんの間になんのアクションもなかった。おい、何やってんだ俺。メッセージを書いては消して書いては消してを何回繰り返したかはもう覚えていなかった。合コンの時の無敵状態はどこに行った。ひよってんじゃねえ。今日こそは送る。腹くくれよ俺。よし、送るぞ。送る。おく、る。送ったぁ! 勢いで送ったメッセージは2人で出かける誘いだった。

 

『週末暇だったらカフェに行きませんか? おすすめのとこがあるんです』

 

 キモイかな。キモイよな。ああ、やっちまったかな? もっと日常会話から始めるべきだったか? ああ終わった。いや、まだ未読だし、ワンチャンあるか? いや未読スルーの可能性もある。そう自分を落ち着かせながらスマホの画面を凝視した。

 

『いいですよ』

 

 キターーー! デートおっけーいただきました! よっしゃー! まあ、デートとは言ってないんですけど。思わず踊り出しそうになったが、そんなことより返信しなければと思い、俺はデート(仮)の日程を提案した。

 

『やった! 嬉しいです。日曜日のお昼でどうでしょうか?』

 

 返ってきたのは柴犬のおっけースタンプ。ここではじめさんも犬のスタンプを持っていることが判明。犬好きなのかな。よし、これも会話のタネになりそうだ。そう思ってスマホにメモした。その時はいそいそとタップしていたが、きっとそんな事しなくても覚えていただろう。勉強は頭に入らなくても、不思議なことにはじめに関することならなんだって覚えられたから。好きな食べ物に好きなコーデだってなんだって直ぐに覚えた。まあ、この時の俺が知る由もないけど。

 デート(仮)を今週末に控える俺はとりあえず服を決めようとタンスから服を引っ張り出して、あれでもないこれでもないと体に合わせながら選抜していった。なんだかしっくりこないな。どうせなら新しく買うか。いや、ここで無駄な出費はしない方がいいか? でもなんかしっくりこないし……。よし、買おう。明日は友達と服屋に行く。早速メッセージを飛ばすとすぐに了承が得られたのはラッキーだった。まあ、お前に拒否権なぞないのだがな! はっはは! この時の俺はデートが決まったことで相当テンションがおかしかった。

 

 1週間をソワソワしながら過ごしていれば、あっという間にデート(仮)当日。服は相談しながら買ったし、髪もセットして俺の頭に寝癖など存在しなかった。そして集合時間の30分前に到着済み。完璧である。後は待つだけだった。

 はじめさんどんな服きてくるのかなぁ。きっと可愛いんだろうな。髪は短いからあんまりアレンジしにくそうだけどそのままでも、いやそれが一番可愛いまである。ってあれ? 俺準備し過ぎか? 俺が勝手にデートって言ってるだけで実際デートとは違う気がするし、ただの先輩後輩で出かけるだけなのにバッチリ決めすぎ? そう思った時には遅かった。待ち合わせまで15分を切っていて、家に帰る時間はなかった。ヤバいどうしよう。背中を冷たい汗が伝った。こっからどうする? いやどうしようもない。まだ何も始まっていないのに全てが失敗した気がして、俺の周りだけ重力が重くかかっているように感じたのを覚えている。そんな中、重い空気を吹き飛ばすような煌めく声が聞こえた。

 

「おまたせ。早かったね」

 

 いつの間にか俯いていた顔を上げるとそこにはいつもより輝いて見えるはじめさんがいた。なんだかお花のオーラが見えるかも。なんてバカみたいに思った。さっきまでのネガティブ思考は一瞬で吹き飛ばされていた。

 

「いや、自分もさっき着いたとこなんですよ」

 

 もう格好なんてどうでも良くなっていて、どうにかはじめさんとの距離を詰めることが脳内の最優先事項。頭の中は仲良くなるための会話デッキでいっぱいでそれ以外が入る余地はなかった。

 

「じゃあ、案内しますね」

 

 見つけたカフェは前に男友達となんとなくで入った店。その後も1人で行くほどお気に入りで、店内に入ると木目調の家具が並んでいて、あんまりオシャレとかはわからない俺でもオシャレだと感じるほど統一感があった。

 

「今から行くカフェなんですけど、食べ物がめっちゃ美味しいんですよ」

「へぇー。それは楽しみだなぁ」

「はじめさんってコーヒー飲みます?」

「飲むよ。ブラックで飲むのが好きなんだよね」

「そうなんですね。あの店コーヒーも美味しいんで楽しみにしておいてください」

 

 道中の会話も気まずい間もなく過ごすことができて、この時のには自分で100点満点をつけたい。

 

「ここです」

「いい雰囲気だね」

「そうなんですよ」

 

 ドアを開ければカランカランと鳴って、いつもの定員さんが「お好きな席にお座りください」と言った。

 

「どこにします?」

「どこでもいいよ」

「じゃあ窓際の席でいいですか」

「いいね」

 

 店内はちょっと暗めだけど窓際は光が入ってきて少し明るく、レポートをやる時とかは窓際に座ることが多かった。

 

「何頼みますか?」

「うーん。おすすめとかある?」

「じゃあ、レモンケーキとかどうですか?」

「いいね、じゃあそれとコーヒーにしようかな」

「おっけーです」

 

 店員さんを呼んで2人分のコーヒーとレモンケーキを頼んだ。俺違うやつの方良かったかな? いや、話して2回目で半分ことかしないだろうし、これでいっか。次来た時は違うのにしようかななんて考えていた。

 

「はじめさんって犬好きなんですか?」

「好きだけど、なんで?」

「いや、スタンプが柴犬だったんで好きなのかな〜と思って」

「ああ、なるほどね。私、柴犬好きなんだ」

「俺も犬好きなんですよね。俺はゴールデンレトリバーとかが好きです」

「ああいう系も好きだな〜。どの犬もやっぱりかわいいよね」

「わかります」

 

 運ばれてきたコーヒーとレモンケーキに手をつけながら何でもない話していると、いつの間にか日が落ちてきて窓から差し込む光がオレンジ色に染まってきた。もう終わりか。最近で一番時の流れが早かったなと思った。

 

「そろそろ帰らないと暗くなりそう」

「そうですね。じゃあ、お会計してきます」

「いやいや私も払うよ」

「いやいやカッコつけさせてくださいよ」

「そう言うなら先輩にカッコつけさせてよ」

 

 お互いに1歩も引かずにお会計戦争。最終的にジャンケンになって俺が勝った。勝敗がついた時、なんてくだらない戦いをしていたんだと2人で笑った。

 

「家まで送りますね」

「いやいいよ。奢ってもらっちゃったし」

「関係ないっすよ。男的には暗い道女の人に歩かせるのは結構まずいんで送らせてください」

「じゃあ、お願いしようかな」

 

 そのままはじめさんを送り届けて、自分の家に帰る足取りは多分人生で一番軽かった。ああ、いい日だった。幸せだ。その夜はぐっすり眠れた。

 

 その後も何回か、いや間違いなく5回デート(仮)をして、告白した。その答えは「喜んで」きっとあの夏の訪れを感じさせるあの日が人生の最高到達点だと間違いなくそう言える。そしてはじめと過ごした日々は俺の人生で一番幸せな日々だった。付き合って1ヶ月くらいからはじめさんをはじめと呼び始めた。きっかけははじめが「呼び捨てで呼んでよ」とお願いしてきたことで、最初はぎこちなかったけど、段々呼び捨ての方がしっくりくるのだから不思議なものだ。

 そして付き合って1年が経ったあの日、はじめは事故にあった。

 

 知らせを受けて病院に駆け込んだ時にはもう息を引き取っていて、通されたのは霊安室。中には既にはじめの御家族が居て、みんなみんな死を惜しんで泣いていた。事故にあったと知らされた時も、病院で死んだと知らされた時もあまりに現実味がなくて涙は出なかったけど、はじめの顔を見て涙が溢れた。顔は綺麗なままで、声をかければ起きそうで、寝ているだけのようで、死んでいるなんて思えなくて、でも、涙は止まらなかった。目の前の自分が人生で初めて恋して愛した人はもう目を覚まさない。その事実に涙が止まらなかった。

 通夜も葬式も俺はただの恋人だったから家族席には行けなかった。離れたところで眠るはじめとの距離が俺の無力感を感じさせた。お坊さんの話も何一つ入って来なくて、ただ涙を流すだけの人形のようだと自分でそう思った。

 

 

 あれから1年と少し。もう季節は2度目の冬になっている。何かが欠けた感覚はありつつも、それでも以前と変わらない生活を続けていた。そんななんでもない日。違うのは今日の夢だ。

 

「今日は夢にはじめが出てきたな」

 

 夢の内容はいつかのお家デートであったような、はじめの家でソファに並んで座って映画を見ているシーン。机には湯気が立ってるコーヒーがあって、それを飲みながらダラダラと時間を過ごしているそんな場面。あの頃は幸せだったなと思って気がついた。あれ? はじめ手を握った時どんな感触だったっけ? どんな匂いだったっけどんな声だったっけ? なんで分からないんだ? どうして。姿ははっきり思い出せるのにそれ以外何も思い出せない。話し方も分かるのに声がわからない。なぜだ。なんで。ああ、やめてくれ。俺からはじめを奪わないでくれ。思い出せ、どんな声でどんな匂いでどんな感触だったか。思い出せ。必死に頭を回しても、首を捻っても、考えても考えても答えは出ない。どうしちまったんだ俺。はじめのこと、全部覚えておきたかったのに。死ぬまで1つだって取りこぼしたくなかったのに。忘れたくなんてなかったのに。俺はなんて最低なんだ。愛した人のことを忘れるなんて。俺はなんて。

 会いたい。会いたいよ。今、どうしようもなくはじめに会いたい。

 何も手につかなくて、今日の講義は行かなかった。このまま行っても頭に入るとは思えなかったから。

 その日も夢を見た。

 

 

 初めて2人で行ったカフェ。何度か行ったそこではじめはコーヒーを飲んでいる。会いたかった。会いたかったよ。思わず座っているはじめを抱きしめた。はじめは困ったように笑ってから「どうしたの」なんて優しく聞く。なんだか恐ろしい夢を見ていた気がする。とても恐ろしい夢。「そっか」と言ってから「大丈夫だよ」とそう言ったはじめを見て、やっぱり好きだなと思った。

 

 

 そして目が覚めた。ああ、あんまりだ。こんな夢を見せてきて何がしたいんだ。幸せな夢だった。ただし、そこに現実味はなかった。今日の夢は手があたたかかった。声も聞いたはずなのに、あたたかかっただけで感触は覚えていないし、声も分からない。もちろん匂いもわからない。本当に俺は忘れてしまったらしい。最低だな、俺って。あんなに愛していたはずなのにたった1年経っただけで忘れてしまうなんて。

 今日の予定も全てキャンセルした。友達から心配の連絡が来てたけど、なんて返せばいいかわからなくて未読スルーしている。昨日からなんだかふわふわと浮いているような心地で、ちょっと違和感があるけどはじめに引っ張られているような気がして悪くない。

 なんとなく外に出てみると、冬らしく雪が降っていた。雪がヒラヒラと舞うのを見て思い出したのはいつかの記憶。「寒いね」って言ったら「そうだね。風邪ひかない様にしないと」なんて聞こえてくるあの日々は、確かな幸せであったのだ。あれはもう、2年前のことらしい。早いとも感じるし、反対に遅いとも感じる。なんだかはじめがいなくなってから、時間の感覚が曖昧だ。

 そういえば、人は声から忘れると聞いたことがあった。そして最後まで覚えているのは匂いだと。あれは嘘だったらしい。だって今俺が覚えていられているのは姿だけだから。

 いっそはじめのこと全部忘れられたら、全部思い出せなくなったらもっと息がしやすいのかな。なんて、なんとなくそう思った。いや、そんなことないか。はじめがいなかったら間違いなく今の俺はいない。はじめとの思い出が全部なくなったら、それはもうきっと俺じゃない。思いが通じあったあの日から、大変なことも幸せなことも2人で分け合って過ごしてきた。いつの間にか2人で1つになっていた。2人で1つならはじめも俺と同じかな。もしかしたらはじめも一緒かな。俺に会えなくて辛いかな。それとも、天国で幸せかな。俺は痛いよ。本当に痛い。涙が出るほど痛いよ。俺ははじめに会いたいよ。

 その夜も夢を見た。

 

 

 はじめが何か言っている。でも、何を言っているかわからない。なんでだ。昨日までの夢は何を言っているかはわかったのに。なんで今日は。ああ、俺が忘れたからか。ごめんな。ごめんはじめ。忘れてごめん。忘れたかった訳じゃないんだ。でも、思い出せなくて。ごめん。ごめん。

 

「奏斗くん」

 

 聞こえた。声が聞こえた。匂いだってわかる。わかる。

 

「だめじゃん。しゃんとしてないと」

 

 はじめ、会いたかったよ。はじめ。なんで死んじゃったんだよ。寂しかった。辛かった。

 

「死人に執着なんて、らしくないんじゃない?」

「俺ははじめがいないとだめなんだ」

「大丈夫。奏斗くんなら大丈夫」

「だめなんだ」

「大丈夫」

「だめなんだよ!」

「奏斗くん!」

 

 弾かれたように顔を上げる。その先ではじめは泣いていた。

 

「奏斗くんなら、大丈夫だから」

 

 俺なら、大丈夫

 

「そう、大丈夫。私が保証する。大学一のマドンナを射止めたんだから自信もってよね」

 

 俺、大丈夫かな

 

「うん。大丈夫。さぁ、立って」

 

 はじめの指先が俺に触れる。額と額がピッタリとくっつく。お互いの呼吸さえも感じられるこの距離で、はじめは息を吸った。

 

「がんばって」

 

 

 ふっと目が覚める。ああ、はじめ。俺、がんばるよ。大学の勉強だって、その先の仕事だってがんばる。挫けることもどうしようもなくなることだってあると思うけど、その度立ち上がってみせる。何でもは出来ないかもしれないけど、それでも諦めたりしない。恋愛は、はじめ以外に好きになれる人がいるかはまだわかんないけど、でも俺はもう大丈夫。大丈夫だよ。だってはじめが信じてくれるから。

 

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