一軒家に男1人と双子、何も起きないはずもなく。

桜木紡

第1話

僕の母親は元々病弱で、僕を産むと同時に亡くなってしまったらしい。そこから父さんが一人で今まで育ててきて、僕は今学校に近いところで一人暮らしをしている。

 ︎︎父さんに楽をさせてあげるために頭のいい学校に行っていい企業に就職する、それだけを考えて勉強して家から少し距離のある高校を受験し、見事受かったのだ。


それで僕は別にその距離を毎日登校しても良かったのだが、父さんが気を利かせてくれてその学校に近い一軒家を借りてくれた。僕だけだしアパートとかワンルームとかでも良かったのでは? と思ったがそこは知り合いの家らしい。

 ︎︎その知り合いは海外に行っていてお金は払い続けているけど誰も使わないのは勿体ないからと有難いことに格安で貸してくれたらしい。


だから家具はその知り合いが使っていた時のものを僕が使っているし、人の家なので僕はこまめに掃除をする、まぁ当たり前か。この生活を入学してから1ヶ月くらい続けているが特に困ったことは何もない。

 ︎︎そんなある日、父さんから再婚するという連絡が来た。


「父さん、わざわざここまでやって来てどうしたの?」


「言うのが遅れたが、ちょっと前に再婚したんだ。だからその相手とその子どもに挨拶してもらおうと思ってな、正直俺も子どもの方は話したことないんだ。俺が勝手に決めたし、一応そらが嫌じゃないか聞いておこうと思ってな」


「僕が父さんの選択を否定すると思う? それに、僕は一人暮らしだからその人達と関わることはほとんどないと思う。だから父さんが納得してるなら僕はそれでいいよ」


僕は父さんの選択なら否定するつもりは無いし、その人達と関わることがほとんど無くて僕自身に何も影響がないんだから否定する理由は無い。せいぜい挨拶の時にどんな人かを確認するだけになると思う。

 ︎︎年齢は分からないが少なくとも僕と同じ学校ってことは無いだろうし、本当に関わる機会は少ないと思う。


「今週の土曜日にご飯を一緒に食べる予定だからその日は予定を空けといてくれ。それはそうとして、学校生活はどうだ?」


「まだ1ヶ月だし、勉強で困ってることは無いかなぁ。友達は……以前のことがあるから作ってないかな、別に必要だとも思ってないし」


「まぁその判断は天に任せるが、その人達は同じ学校に居ないんだ。それに皆があんな風に思ってるわけじゃない、昔とはもう違うんだ」


確かにあいつらはこの高校にいないと思う、僕がこのことを隠して過ごせば良いとも思ってる。だけどバレる可能性はゼロじゃないしバレた時に馬鹿にしてくるやつが居ないとも限らない、だから僕は一人で居るんだ。


「大丈夫、僕は一人で楽しくやってるから、心配しなくても大丈夫だから。それに、僕は昔みたいに弱くは無い、ちゃんと一人で何とかできるから」


「天がそういうのなら何も言わないが……本当に辛くなったら相談するんだぞ?」


「分かってる、二度とあんな事はしないから」


父さんはゆっくり頷いたあと、家を後にした。今考えればあの時は父さんの気持ちを考えず本当に馬鹿なことをしたなぁと思っている。


「父さん帰ったし昼ごはんでも……ってそういえば冷蔵庫の中身空っぽなんだった。帰る時がきついけど数日分の材料も買いに行くかー」


僕は早速財布と袋を持って近くのスーパーに向かった。



§§§



ちょっと時間が遅いから、特売のやつとかは既に無くなってたのは残念だけど特売のやつは早い者勝ちなのでこればかりは仕方ない。というか僕は小柄だしあの主婦たちの取り合い? みたいなのに潰される気がするしあんまり行きたくない。

 ︎︎せいぜい学校が午前中に終わった後、たまに残ってた特売のやつを買ったことがあるくらいだ。


「うーん、今日と数日間のご飯どうしようかな」


僕はいつもスーパーに来てから何を作るか決めているのでスーパーに結構な時間居ることがほとんどである。そのおかげでたまに追加された商品を買うことが出来たりするので変える必要はないと思ってる。

 ︎︎さすがに時と場合によっては決めてから買いに行くけど。



§



それからしばらくスーパーに居て、今週のご飯の材料を買った。まぁそのせいで無茶苦茶重くなって現在、帰りで苦しんでるんだけどね。

 ︎︎高校生だし車はもちろんないし、僕は学校近くに住んでるということで自転車もないので必然と買い物も歩きになってしまうのである。


「すみません、薬局ってどこにありますか? 最近ここに来たばかりでまだどこに何があるか分からくて」


僕に声をかけてきたのはどこかの記事にでも載ってそうなほど美少女で、歳はおそらく僕と同じぐらいだった。というかこの少女……なんかどこかで見たことあるような気がするんだよなぁ。


「薬局はここを真っ直ぐ進んだところを右に曲がったらやたら主張の激しい看板があるからそこが薬局だよ。主張の激しい看板があるから分かりやすいと思うし迷うことは無いと思うよ」


「ありがとうございます、お兄さん」


少女は少し早足で薬局に向かっていった。


「絶対どこかで見たことあるんだけどなぁ……」


まぁそんなことは置いておいて腕が死んでしまうので早く家に帰るとしよう。

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