第21話
クラウスがナイフを仕舞ったのを見届けて、ふと思い至った疑問を口に出す。
「…信じてくれるのか?」
「当たり前じゃないですか」
あっけらかんとした様子で間髪入れずに答えた己の従者に唖然としていると、そんな私の心中を知ってか知らずか、嬉しそうな顔で新しい紅茶を入れながら話し始めた。
「むしろ納得しました。話し方や立ち居振る舞い、言動がやけに大人びているなと常々思っていましたから。それに、レイヒ様が私に嘘つくとは到底思えませんし、私はレイヒ様の専属執事ですよ?大切な主の話を信じるのは当たり前です」
私の不安を打ち消すように、穏やかな笑顔を浮かべながら告げられたその言葉に、思わず泣きそうになってしまった。信じてもらえない、もしくは異常者を見るような目で見られるかもしれない覚悟はしていた。けれど、実際はなんの迷いもなく受け入れてくれたことに安堵し、いつもと変わらぬ態度で接してくれるクラウスに、心の底から感謝した。
「……ありがとう…」
泣き笑いのような顔で小さな声でそう呟いた私に、クラウスは何も言わずに微笑み、私の感情が落ち着くまでただ静かに傍に居てくれた。そんな姿に、私の専属執事が彼で良かったと思うと同時に、クラウスを見つけた前世の記憶を思い出す前の自分を褒めてあげたいとも思った。
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