第19話

二人肩を並べて、他愛もない話をしながら校門を出たところで、よく知った声が私を呼んだ。


「麗氷!」


振り向かなくても分かる。と言うよりも、勇輝だと分かっているからこそ振り返りたくないのだ。気付かなかったふりをして、そのまま蒼夜と談笑しながら歩き続ける。追いかけてくる気配を感じながら曲がり角の先の階段を降りようとしたところで、勇輝に腕を掴まれた。


「麗氷!待ってってば!」


驚いて掴まれた腕を振り払いながら後ろを向いた瞬間、体制を崩して階段を踏み外してしまった。落ちていく私の手を掴んだ幼馴染二人が一緒に落ちてくる姿を見て、受け身を取る余裕もなさそうな二人をなんとか守ろうと階段下に視線を向けた瞬間、思考が止まってしまった。本来ならこの場所に、否、この《世界》にあるはずのないものがそこに存在していたからだ。漫画やアニメの世界にしか存在しないであろう、七色に輝く魔法陣がそこにあった。


魔法陣の放つ光が強くなり、そのふちから白い帯のようなものが淡い光を放ちながらこちらへ向かってきたのが視界に写った瞬間、ようやく止まっていた思考が動き出した。空中に投げ出された状態ではそれらを避けることもできず、私達を捕らえるように巻き付いた帯は魔法陣に向かって勢いよく引き込んだ。


「麗氷!!」


魔法陣に飲み込まれる寸前、蒼夜が私を呼ぶ声が聞こえた気がした。

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