第7話
空の言う、その日になった。
「うわぁ、めっちゃ久しぶりじゃん!空くんイケメンすぎー!」
「秋田さん久しぶりだね」
最近噂のオシャレなカフェ。学生の多くが足を運ぶこのお店は、秋田さんが選んだらしい。
昨日、秋田さんに会うと言われ「行ってくれば?」と返したところ「優も来なよ」と誘ってきた。「来なよ」は、俺と一緒に行こうよという意味ではなく、陰でコソコソついて来なよの意味だ。
当然行く気はゼロだったが、秋田さんと別れた後に好きな漫画を買ってやると言われ、私の中でゼロがヒャクになった。
秋田さんと空が向き合い、私は秋田さんと背を合わせている。空から私の背中が見える状態だ。
それにして彼女、イマドキの女子感が否めない。本当に同じ高校生かと疑いたくなる。
空に負けない茶髪をクルクル巻き、顔は化粧で塗りだくっている。メイクは今までしたことがないし、流行とかもよく分からないが、チークを濃く塗っているのは多分今流行りなのだろう。外でよく見かける。
あれのどこがオシャレなのか疑問だ。なんだか、酔っぱらった顔みたいじゃないか。それとも、誰かに殴られたかと思わせるメイク。服装も見たいが、後ろを振り向くのは気が引ける。
「ウチの学校でさ、空くんめっちゃ有名なんだよねー。ほら、イケメンじゃん?」
「あはは、ありがとう」
「小学校のときから可愛い顔してるなと思ってたんだよねー!」
「へえ」
「こんなにイケメンになるなんてさー、告白でもしとけばよかったかなー」
よく言うよ。二人の会話を聞きながら、秋田さんに毒づく。
空は覚えてないかもしれないが、秋田さんは空をいじめていた女子の一人だ。私は彼女に「いつも空くんと一緒にいるんなんて、友達少ないんじゃない?」と言われたことがある。
お、なかなか私、覚えてるもんだ。そうそう、そう言われたことがあったんだ。
美味しいと評判のオレンジジュースを飲む。
んんっ、これで四百円もするの?詐欺でしょ。こんなの、自動販売機のと味変わんないじゃん。
「急にメールきて驚いたよ。アドレス交換どころか、ロクに話もしたことなかったから」
「あぁ、なんか友達が教えてくれたんだよねー。イケメンのアドレス知ってるっていうからさ、誰かと思って聞いたら空くんじゃん?びっくりだよねー」
いや、お前のがびっくりだわ。特に仲良かったわけでもない男のアドレスを、ホイホイ聞いてメールまですんの?すごいわ。
最近聞く、肉食系女子か。ふうん。
「それで、今日は何の用だったの?」
「別に用ってほどの用でもないんだけどさー、懐かしいなと思ってさー」
「へえ」
「小学校の頃仲良くなれなかったからさー」
「あ、じゃあ木村のアドレスも教えてあげるよ。あの頃仲良くて、よく遊んだから」
「いやいやいや、いらねえわー。何で木村、つか誰だしー」
きゃはは、と高い声で下品に笑う秋田さんは私の好きな人種ではない。それは多分空も同じだろう。喧しいだけの女は嫌いだ。
「空くんさー、彼女いねえの?」
「うーん、どうだろうね」
「えー、教えてよー、なんなら立候補したいなー」
「遠慮するよ」
「きゃははは。冗談だしー。本気にしたの?きゃはは」
どうも空は掃除機気質なのかもしれない。ゴミばかり吸い取る天才だ。
確かに、良い子って大体空のことを見ないような気がする。こういう女ばかりが空に群がるから、近寄りたくないのかな、多分そうだ。
私も空と小さい頃から一緒でなければ、関わらなかったかもしれない。
雑誌に載ってそうな、いかにもイマドキ系男子って感じがするし。私なんてただのゲーム好きアニメ好きのオタクでしかないし。そんな人種が交わることなんてあるだろうか。いや、ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます