第4話

かくして放課後、クラスメイトの誘いを断った私は空と帰り道を歩く。

桜が綺麗に咲いているが、地面を見ればこの前の雨で桜の花弁が汚く散りばめられている。咲いているときは綺麗なのに、散った後はとても汚らしい。雨に打たれ、踏まれ、道にこびりついている。


「そういえば、クラス会があったんだって?」

「何で知ってるの」

「誰かが言ってたよ。まだ四月なのにクラス会なんて早いね。そのクラス会で仲良くなるのかな?」

「知らない」

「四月のクラス会ってあまり良いことはなさそうだよね」


爽やかに笑ってはいるが、本当に何を考えているか分からない顔だ。


「本当は私を誘って、空も呼びつけようとしてたみたいだよ」

「あはは、そんなことだろうと思った。だから断ったの?」


歓迎されているのは自分ではないと知って、だから断ったの?というニュアンス。性格の悪い男だ。


「別に行ってもよかったんだけど...」


そう、別に行っても良かった。行って、空がどれだけ私に執着しているのかを見せつけて、お前らが入る隙間なんてこれっぽっちもないんだ、と目の前で証明してやるのもいいかなと思った。


「知らない人間に時間使うより、昨日買ったゲームをやりたい」

「あぁ、あの新作ね。お店に入ってすぐカゴにあのゲームを放り込んでたから、よっぽどやりたかったんだろうとは思ってたんだよね。じゃあうち泊まる?」

「そのつもり。どうせ明日休みだしね」


やりたいゲームを買ったのは私ではなく空。でも欲しかったのは私。


「それで、友達はできたの?」

「どの友達?」

「遊びに誘う友達」

「過去にあんまりできなかったんだから、新学期始まって早々できるわけないでしょ」

「それもそうか」

「...空は?」

「んー、何か色々話しかけてくるけど遊びに誘いたい程の人間はいないなぁ」

「そう」


嫌味な奴だ。自分は皆の人気者だという自覚はあるし、私がそれに対して引け目を感じていることも承知しているのだから。それを敢えて言うあたり、こいつは性格が悪い。


「じゃあ、遊びに誘ってくる友達はいるんだ」

「悲しいことにね」

「まあ、何かあったら言いなよ」


そう言って頭を撫でる空の顔は、どこか歪んで見えた。


「何かあったら、どうにかしてくれるの?」

「もちろん」

「どうにかって、どうするの?」

「それは秘密だよ」

「どうして?」

「どうしても」

「敵をやっつけてくれるの?」

「違うよ、優を守るんだよ」

「どう違うの?」


平行線の会話を続けながら、空の家へと足は進む。


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