第8話 酒を飲んでも呑まれるな。

 カルーアミルクというお酒は知っているだろうか?

 見た目は本当にミルクで––味もアルコールが入っているとは思えないくらい…飲みやすい。

 なので、実は人気がある飲み物だ。

 そして––隠れアルコール度数が高い酒なのだ。


 でも、そんなこと知るわけないじゃない?

 【このお酒は度数が高いです!】なんてマイナスイメージを売り込むことはしない。

 【このお酒は飲みやすい】とメリットだけを売り込むのが、どこの場所でも常識だ。

 ……だから、僕はついつい注文してしまった。

 それは、つばめさんやすずめさんが飲んでいる事への申し訳なさと––誰かと一緒に楽しむことを経験したくなったから。

 

 「おまたせしました~」

 店員が僕の飲み物を持ってきてくれた。

 姉妹は僕のスマホの中に映る神様から、色々な話を集中して聞いている––その姿を横目に「あれ、ミルクじゃん」といって飲み干す僕。

 ……これが、僕にとって失敗だった。

 アルコールは人によっては直ぐに反応することもあるようで……僕の顔は見る見る熱くなる。

 そして、呂律が回らなくなる感覚があるけど……大丈夫?

 「……ふーん……」「なるほどですね」

 『そうじゃな。まあ、今後共わらわ達をよろしくたのむ~!』

 そう言った会話がなされた後––僕の変化に3人は慌てはじめた。

 「え!?ちょっと!!?」「み、水飲んでください!」『にゃっはっは、なにしとるんじゃ~』

 そう様々な言葉が流れだしている中––僕の耳はその言葉をクリアに聞こえている。

 あれ?あれ??

 「にゃんで??」

 ……そこからは、地獄だった……みたいだ?


 「ちょっと!!いぬ丸さん!?」

 「あは!!今日はありがとうごじゃいます~!!うひひ」

 「ほら、水飲んで!」

 「うう~、水ぅ~……」

 『大丈夫かの?』

 「神様!この子達はいい子ですよ!!」

 「ありがと~!」「いえいえ」

 『さっき、話した時から知っとるぞ?』

 「ええ!?そうなんですか!?……んにゃー、この子達にバレちゃった時は怖かったけど……よかった!よかったよー!!!!」

 「ちょ、少し声を……」

 「もう!この子達大好き!!!!!!!!!!!!!!!ねえ、僕と一緒にいてよ!!!!!!!!!!!!!」

 ……その後、僕の意識は深淵へと落ちた。


 

 

 多分……というか、絶対に夜が明けている。

 それなのに、僕は自宅の布団にくるまるように寝ていた。

 服もあの時とは違って、寝間着でいるのが不思議だ。

 「ん……あれ?」

 「んあ?起きた?」

 ママとは違う声が聞こえる。それに……うん、良い匂いがする。

 この匂いは––新婚夫婦が理想に思う匂い。

 「おはよう~。昨日は大変だったんだよ?」

 ……寝ぼけ眼の僕の前には、昨日見た姿がいた。

 「え?」

 「にゃっほ~?」「おはようございます」

 「あ、お、おはよう…?」

 「とりあえず、水飲んでからしじみの味噌汁飲んでください」

 「わ、わかった」

 あまり事情を飲みこめないまま––僕は洗面台へと向かい、顔を洗った。

 

 そこから、食卓へと座った僕の目の前には【ザ・朝食】という感じの––

 焼き鮭、豆腐、味噌汁、ごはんという定食が置かれていた。

 「味噌汁まだまだあるから飲んでゆっくりしてくださいね」

 すずめさんの優しい言葉と笑顔に––少しだけドキッとした。

 つばめさんも「へへ、久しぶりのちゃんとしたご飯だ!」と言って一緒にご飯を食べた。


 味は凄く優しく––まさに作った方の人柄が出ているような味だった。

 ママの料理とは違って、これも凄く美味しかった。

 「「ごちそうさまでした」」

 「はい、おそまつさまでした」

 僕とつばめさんは朝食を食べ終え、すずめさんは優しく微笑むように僕達の食事を見守っていた。

 まあ、これが本当の家族だったりすりゃ日常で片づけられるけど……今は違うよな。

 「さ……さて、今どのような状況か説明を……お、お願いします」

 寝間着についている推しのワッペンを隠しながら––2人に説明を求めた。

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