第4.4話 バーベルでデッドリフト(1)
「さて、実際に走る姿を見てから、ノルハムでテストをして、ハムストリングに課題がありそうだということがわかったので、次は走りを改善するためのハムストリング強化に取り組みに入ろうか!」
「ただ、今回はノルハムを実行できるだけの筋力がない状態がスタートだから、まずはノルハムを実行できるだけの能力を獲得することから目指そう」
今回はテストとして利用したが、ノルディックハムストリングはハムストリング強化のエキササイズとして使われることが多い。それを実行できないときに、できるようになるまで挑戦し続けるという方法もないわけではないが、効率的とは言い難い。そういったときに、相手にとって適切なレベル感となる難易度のエキササイズを提案できるかどうかも、職人としての腕の見せ所であるとフジカルは考えている。
「目指す何かができないときに、当初行おうとしていたことよりも難易度が低い、もしくは強度が低い方法を模索することも凄く大事なことだ!」
難易度を上げることに関しては多くの人々がチャレンジしがちであるが、難易度を下げることを嫌う人は多い。その結果、本来であれば達成すべき品質で、そのエキササイズを実行できず、そのエキササイズの効果を得るための品質に達しないこともある。そうなってしまうと、エキササイズによる効果が大幅に減少してしまったり、逆に間違ったエキササイズの実行方法が害になってしまうことすら考えられる。
「少しレベル感を下げて適切にすることを、リグレッション、デグレーション、レトログレっションなど表現は人によって色々だけど、実際には実現が困難なところまで難しくし過ぎないことは、忘れがちなので気をつけよう」
自分自身の現在地点を正しく把握し、自分に合ったレベル感のエクササイズを選択できるような難易度調整を勇気を持って行えるかどうかも、ときとして大事なのだ。
「いまはノルハムができないから、他の種目で強化していくんだけど、まずは王道的なところでデッドリフトから行こうか!」
そう言うと、フジカルは何もないところから、バーベルのバーとウェイトのプレートを取り出した。
おそらくアイテムボックスからだろう。
「これは何ですか?」
不思議そうにエマが聞く。
「これは、バーベルというトレーニング器具だ!」
「バーとプレートに分かれていて、重さを調節できるので、トレーニングを行う各個人に合わせた最適な重さ調整ができる素晴らしいトレーニングアイテムだ!」
バーベルを使ったトレーニングの良いところのひとつに、重さを調節できるという点があげられる。最初は軽い重さでフォームを整えることに注力し、無理に重たいウェイトに最初から挑戦しなくても良いのだ。そして、少しずつ挙げられるウェイトが重くなっていくことで、自分の成長を実感することもできる。
「バーベルを使って色々なトレーニングができるが、今日やるのは、まずはデッドリフトだ」
「デッドリフトは、バーベルを使った基本的な種目のひとつだ!」
スクワット、デッドリフト、ベンチプレスは、筋トレのbig3と呼ばれることがある代表的な種目だ。効果的なトレーニングであるからこそ、基本とされており、トレーニングを行ううえで重要な種目であると言って差し支えないとフジカルは考えている。
「バーベルを使った下半身強化として、背中にバーベルを担いでしゃがむバックスクワットも有名だが、ハムストリングを強化したいのであれば、デッドリフトの方がお勧めだ!」
「1999年の論文[Wright1999]では、バックスクワットだとハムストリングの活動は、デッドリフトの半分だけだと紹介しているぞ!」
スクワットもデッドリフトも、両方とも素晴らしい種目だ。ただ、今回に関しては、ハムストリングに着目したいので、あえて選ぶとしたらデッドリフトであろう。ただ、そのうち、スクワットにも慣れてもらおうと密かに考えるフジカルだった。
「今回は、速く走るためにハムストを強化したいので、デッドリフトに挑戦だ!」
フジカルが拳を突き上げて"やるぞ!"というポーズを取ると、無表情ながらエマも同じように拳を突き上げてノって来た。
エマは、これから取り組もうとする種目がどんなものであるのか、そこまで強い興味はなさそうだが、速く走りたいという目的は明確なのでノリは悪くない。
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参考文献
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[Wright1999]
Wright, G. A., DELONG, T. H., & GEHLSEN, G. (1999). Electromyographic activity of the hamstrings during performance of the leg curl, stiff-leg deadlift, and back squat movements. The Journal of Strength & Conditioning Research, 13(2), 168-174.
(著者注)本文中では、Stiff leg deadliftとbacksquatを比較した[Wright1999]の論文を紹介していますが、本文中で行っているエキササイズはstiff leg deadliftではなくdeadlift(or conventional deadlift)です。
ただ、2013年の論文[Bezerra2013]では、stiff leg deadliftとdeadliftの間でハムストリングの筋活動に差はないとしています。
2013年の論文において、その2つのエキササイズで筋活動に差が出るのは、内側腓腹筋(medial gastrocnemius)と外側広筋(vastus lateralis)であるとされています。
このため、本文中では、バックスクワットとデッドリフトを比較して、デッドリフトの方がハムストリングへの刺激が強いと表現しています。
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