第48話 『苦しめてごめん・・』
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幼友達グループの女子、友里に慶子や康代と3人ともいい感じに
女子力があり、それぞれに魅力的な女性に成長していた。
俊哉はその中でも友里には特別な感情を持っていたのだが、
告白するというところまで感情が育つ前に同じ大学で一緒になった
2才年上の神尾皇紀に友里を持っていかれたという経緯がある。
神尾皇紀は自分や友里と同じ高校だった。
……なのでその頃自分たちは神尾と接点がほとんどなかったものの、
顔くらいは見知っていて会えばすぐにわかるくらいの認識はある。
(顔を知っているだけにあいまいな方向性ではなく、皇紀の顔を思い浮かべてきっちり憎悪を向けることができた。
◇ ◇ ◇ ◇
初めて友里の家に立ち寄った日から3日が過ぎても友里の容態は
良くならず日曜が開けるのを待って俊哉は手術をした産婦人科医院ではなく、県立中央病院へ付き添った。
一週間の入院を勧められほっとした俊哉だった。
投薬だけの自宅療養に不安を感じていた為。
退院の時も俊哉は友里を迎えに行った。
体調は元に戻ったようで元気に退院してきたものの、見るからに
メンタル面で友里は元気がないように見えた。
心配でそれからも俊哉は友里の様子伺いに毎日通った。
3日目のこと、様子見に来て軽い雑談の後いつものように
『じゃあ、また明日様子見に来るから』そう言って帰ろうとした。
靴を履いて振り向くと友里の目には涙が浮かんでおり、思わず
俊哉はどうしていいか分からず固まってしまった。
「ごめん、気にしないで何でもないの。ずっと来てくれてありがと」
言ってることと表情がばらっばらっだった。
友里の眦からはどんどん水滴が溢れ落ちてくる。
たまらず履いた靴を脱ぎ三和土に上がった俊哉は友里を抱きしめた。
「身体の調子が悪いのか?」
「ううん、俊哉くんのお蔭で良くなってる」
「じゃあ、何で泣いてんのかな?」
暗い雰囲気にしないよう明るい調子で友里に尋ねた。
「うっ、うっ~苦しいの。すごく苦しいの。お腹にいた私の赤ちゃん・・
どうしよう、忘れようって思うのに頭の中に残ってる記憶が邪魔をして、
胸が痛くてたまらない。夜眠れない、うっぅー」
俺は人の慟哭というものを始めて目にした。
「今夜ついててやるから」
「ごめん、無理させて」
「友里、俺は友里にもう一度赤ちゃんプレゼントできるけどどうする?
赤ちゃんがちゃんと友里のお腹に戻って来たら結婚してふたりで育てるっていう案もあるぞ。どうする? 友里の好きにしたらいいよ」
「あぁぁーーっううぅーーっ」
俺がそう提案すると友里が過呼吸起こしそうなほど号泣し、
俺にしがみ付いてきた。
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