第38話 『苦しめてごめん・・』

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 やられた、と思った。



 アイッだ、間違いなく犯人は。

 根米菜々緒。



 なんてことを、信じられないヤツだ。




「えっと……それは……根米だ。


 彼女が君に送信したんだ。


 友里、俺の送信記録見て」




 俺は友里にスマホを渡した。


 じっと見ていた友里から出た言葉……。


「登録のアドレスが私のものじゃないから、意図的に

その根米っていう人に変えられてた可能性が高いね。


 何度送っても届かないはずだよね」


 やるせない表情の友里からスマホを返された。




「私からのメールや電話もブロックされてたんでしょうね、たぶん。


 それで私たちはお互いに連絡を取れなくされてた。


 堕胎した時に、一度でいいから皇紀に会いたかったなぁ~」



 あの夏、一度でいいから顔を見せに帰って欲しかった、

一緒に寄り添って欲しかった。




 今更言っても詮無いことと『会いたかった』と言うに留めた友里だった。




 怒るところなのに

『一度でいいから会いたかったなぁ~』とかわいいことを呟く友里に、

返せる言葉があろうはずもなく、皇紀はうなだれるしかなかった。




「たぶんその根米って同じ人からだと思うけど、先月

その人自身の携帯からかな、注意喚起のメールが届いてるんだけど

読んでみる?」


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