悪魔と契約をして、10万人と友達になってみた。

桐山なつめ

第一章

1 八月十日(火)(前日)

「お友だち、いりませんか?」


 玄関ドアを開けると、麦わら帽子をかぶった少女が立っていた。

 とても愛くるしい顔立ちをしているのに、大きな瞳は赤く爛々と輝いていて、どこか人間離れしたような薄気味悪さが漂っている。


「……あなた、誰ですか?」

「あ、申し遅れました」


 少女はうやうやしく頭を下げると、こちらに名刺を差し出してきた。

 そこには、『悪魔 ヨル』と印字されていて、あまりの胡散臭さに僕は顔をしかめる。


「宗教の勧誘かなにかですか?」

「いいえ。ヨルは、北村さんの望みを叶えるためにやってきたのです」

「はあ……」

「お友だちが欲しいんですよね?」


 再び彼女が口にしたという単語に、無意識に体が強張る。そんな僕の反応に、ヨルと名乗る少女は唇の端を吊り上げて笑った。


「悪魔契約って、ご存知ですか?」


 僕は大げさにため息をついた。


 やっぱり、さっさと死んでおくべきだったのかもしれない。

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