やまねと楓とデスゲーム
蠱毒 暦
壱話 ハジマリ
ここからバスで一時間半。ようやく会場へと着いた。
「……姉さん、体は大丈夫そう?」
「はい。問題ありません。」
楓は微笑んだ。
「やまねこそ、昨日は楽しみで夜寝れて無い事、私は知っていますよ。」
「あー………ほら、あそこに行くみたいだよ!行こう!!」
「はいはい。」
話を誤魔化しつつ、会場の中に入った。人が沢山いて混雑していた。
「やっぱり、沢山いるね。」
「私達の席はあそこの様ですね。」
楓は自身のチケット見ながら指を指した。どうやら席の場所は、最前列の真ん中らしい。
「…VIP席なのでしょうか?」
「どうだろう。でも場所があそこだし、とにかく行こう。」
やまねは楓の手を握った。
「人混みに巻き込まれないように、気をつけてね。姉さん。」
「やまねが手を握っている限り、大丈夫ですよ。」
そうして人混みをかき分けて、ようやく自席の場所についた。
「もう手を離しても大丈夫ですよ。」
「うん。分かった。」
やまねは手を離して自席に座った。楓もそれに続いた。数分後、このゲームの制作者らしい人から、このゲームの軽い説明を聞いた。
「……では皆さまにはこちらで個室を準備しております。そこにこれからご案内しましょう!」
会場からスタッフらしい人がぞろぞろと現れ
る。そしてゲストの案内を始めた。少しして……
「佐藤やまね様と佐藤楓様ですね。どうぞこちらへ。」
「行こう姉さん。………姉さん?」
楓は何か考え事をしていたが、すぐにやまねの方を見る。
「はい、行きましょう。」
スタッフに連れられ会場から出て階段で三階まで登ったところで、
「佐藤やまね様はこの階のあそこの部屋になります。」
「あっ、そうなんですね。」
やまねは楓を見る。
「大丈夫ですよ。後でゲームの世界で会いましょう。」
「そうだね、じゃあまた後でね。姉さん。」
スタッフと楓は階段を登っていった。やまねはさっき言われた場所の部屋へと入る。
「うわぁ…何も無いな。」
部屋は全面が白く、ベットとその上にVRゴーグルっぽい何かが置いてあるだけだった。
「いつもの奴と違う気がするけど、これが最新って奴なのかなぁ。谷口くんなら詳しく知ってるだろうけど。」
特にやる事も無いので、ベットに寝転がり試しに頭に付けてみる。その瞬間、景色が切り替わった。
「……あれ?ここは…。」
辺りを見渡すと、ビルやマンションが建ち並んでいた。
(さっきまで部屋の中にいた筈…だよね?)
よく見ると他の人たちもいて、同じ様な反応をしていた。
(これ、ゲームの中なんだ。)
視界の端にアイコンがあった。それをタッチする。今持ってるアイテムやステータス等が見れるようだ。
(まあ、何も持ってないか。)
まだ何も始まってないし。一旦、ログアウトし
ようとボタンを押そうとしたそんな時だった。
……空から声がした。
「…これで全員、ゲームにログイン出来ました。改めてようこそ、デスゲームの世界へ。」
白い翼が生えた、まるで神様のような存在がそう高らかに宣言した。
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