第7話 勧誘~紅葉 祐世(もみじ ゆうせい)の場合
「何処だ此処?知らない天井どころか天井が無い?」
雰囲気的には洞窟内の天井の抜けた広間だろうか?石筍だったモノに赫い蠟燭が燭台の様にあちこちに立てられ他にもいくつも立てられた篝火と闇を照らしている。
自分の身に何が起こったのか回想してみる。
確か検診して再検査・入院って流れになって会社に休職届けだして糞上司に嫌味言われて…検査入院を薦めてきた
「お目覚めかね?」
声を掛けられ身を起こそうとするが四肢は拘束され動けない。
辛うじて動かせる首を巡らせば其処には巫女服を纏ったがコスプレ女が居た。
「
「静かにしたまえ。此処は祈りの場だ。」
言われて首を巡らすといつの間にか周囲を
「祈り?」
周囲の異様さと自身の拘束されているという現状。思い至る想像に冷や汗が流れる。
「生贄?」
「そうとも言えるし違うとも言える。紅葉君、光栄に思うといいよ。君はね
天に向かい指を指す。初夏の星空には『
「遥か星間の彼方より訪れし旧き
そういうと千々代は懐中から取り出した林檎くらいの石ころを伏し拝む。
その石の表面にはポリプ状の生物が化石になって嵌り込んでいる。
「忌々しい『
「いやちょっと理解できないって!そういうマニアックな性癖に理解求めないでくれます?」
「君はこの御方と一つになるんだ。君が望むなら我々の操ぐらい儀式後に喜んで捧げよう」
「だが断る!生贄なんざ御免だし性癖も至ってノーマルなんでね」
「まぁ食わず嫌いは良くないぞ?我々千々代の民を格別だという権力者もいる。さぁ
「やめろぉ!」
ガチャガチャと手足の鎖を鳴らして抵抗するも何の効果もない。
「いと気高きハスター神いあ いあ はすたあ はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい あい はすたあ、対なる双子神、ツァール神・ロイガーノス神 いあ いあ つぁーる・ろいがーのす いあ ろいがーのす・つぁーる…」
祝詞のような呪文のような詠唱が場に響き…鈍く光る白刃が胸に突き立てられる。
灼けつくような痛み、声にならない絶叫。胸央から取り出されたまだ拍動する心臓…次第にかすみゆく視界の中、紅葉は心臓の跡に化石が胸中に収められるのを見ていた。
詠唱の終わった静寂の中どこからか口笛のようなかすれた音が低く響く。
儀式場の中心から風が吹いた。吹き付けて来るのに何故か
「おおおぉ我らが祖たるチョ-チョ-よ我ら千々代は成し遂げたり!
歓喜に極まる千々代達の顔に異風が吹きつける。
「あ?…ふぇ?」
千々代達狂信者の顔が手足がぐずりと崩れる。
闇が弾け篝火が、蠟燭の火が闇を照らす力を失う。
輝く闇の中低く響き渡るかすれた口笛の旋律が止んだ時、闇が通常の闇に戻り篝火の炎が闇を照らし出すとそこには腐汁に塗れた
そんな紅葉を崖上から見下ろす影があった。千々代が紅葉に病院出資者の製薬会社の社員だと紹介した少し神経質そうな眼付きの眼鏡をかけたエリート然とした男。
「ふむ…
そう言い残し春日恭二が溶けるように消え失せる。
翌日、 事件を察知した
「と、いうわけで検査の結果だが…紅葉 祐世、貴様に
「ひとつ、政府研究機関の
「それ実質一つだろ常識的に考えて」
死亡通知書を破り捨て紅葉 祐世は猟犬を選択した。
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