第4話魔法少女VS災厄の魔女VS改良人間
ある晴れた平和な日。
こむぎとペロはひとりの魔女と出会っていました。
「お、ほへぇ~~……」
珍しくこむぎがタジタジとなっています。
ペロは尻尾をふりふり、興味深げに見上げています。
「ふーん。あなたが噂の魔法少女ねッ。わたし、災厄の魔女のアナコンダっていうのよ。おぼえておいてね」
「あ、あなぁ、こんだぁ……」
「そう、アナコンダ。魔女ネームってやつね。魔法少女はなにか魔法ネームってあるのかしら……?」
「……ないよ。マジカル娘とか、色々言われているだけ……」
しげしげと眺めるこむぎ。
魔女はこむぎを見て、まだお子ちゃまねとつぶやいています。
アナコンダの本名はみすれと言いますが、自ら名乗っているのは魔女ネームだそうです。
つば広の魔女帽子に、不釣り合いに露出の多い服装。
殆ど裸かというくらいで、乳房の半分とおへそが露出しています。
それも見事な形をした爆乳でした。
ひと言で言って痴女といって良いくらい。
日本人離れした、見事なグラマラスボディです。
こむぎはそのスタイルに圧倒されています。
(ふぇ~~、大きなオッパイ……)
『こむぎちゃん。このひと有名な人だよ。よくスマホで撮られてSNSで紹介されている人』
「えーっ、んじゃ、いん、ふるえんさー、ってひと……?」
「違うわよ。魔女、まーじょ。この姿を見れば分かるでしょう。魔女帽子とほうき、それとこの悩殺グラマラスボディ──」
「───!?」
「お子ちゃまには、分からない魅力よね」
ポーズを決めるアナコンダに、ペロは反論の言葉を飲み込んだのでした。
あまり深く関わっては、いけない気がしたからです。
人の言葉を話せても、やはりペロはイヌ。
野生の勘が囁くのでした。
「そのしゃべるワンコ、あなたの使い魔……?」
『…ち、違います。ボク使い魔じゃありません……』
「ふーん。そうなの、わたし色々な使い魔を使役したことあるんだけど、生き物って面倒なのよね。ヘビとかカエルとかだと呼んでもすぐにやって来られないし、鳩やタカだとすぐに来るけど、運べる荷物は僅かだし、像だと大き過ぎて邪魔になるじゃない。サメとかは陸に上がると死んじゃうし」
『そ、そう、ですよねぇ……(なぜネコとかイヌとかの、オーソドックスな生き物にしないの?)』
「使い魔って、魔女が訓練するの…?」
「う~んちょっと違うかな。魔女の使う魔法に動物を使役する魔法があるのよ。それに相性もあるかなぁ……」
「ふ~~、難しいんだね……」
「そうよう、やっぱり魔法の才能や修行も必要だしね。魔女になるのって、なかなか難しいの」
『──へーっ、魔女になるのも大変なんですね。アナコンダさんは、や、やっぱり才能があったんですね。ハ、ハハ…』
「もちろんよ」
胸を張って大いばりなアナコンダ。
少し引きつりながら笑うペロ。
額に、見えない汗が垂れているよう。
と、その時──。
「フッハハハー─! やっと見つけたぞ、小娘、いや魔法少女!」
白衣に片目眼帯という、いかにも怪しい研究者といった感じの壮年の男性。
「「「えっ……だれ?」」」
「分からんのも、当然だ。まだ自己紹介をしとらんからな……、って、聞け、オイ!!」
こむぎとペロ、アナコンダは別の話をしています。
アナコンダの趣味だとか、こむぎの好きな食べ物とかの話題で盛り上がっていたのです。
男を完全に無視した態度。
「こら、私の話を聞くのだ。私はドクタードーピング。改良人間を作っているマッドサイエンティストだ!!」
「あっ、この人自分でマッドサイエンティストっていった。いるのよね、こういう人」
「え、なにそれ──」
『頭のおかしい、変な発明をする博士のことだよ。こむぎちゃん』
「変なとは何だ。変なとは──。私は偉大なドクターだ」
いがみ合いとも名乗りともつかない応酬がしばらく続く。
どうやらこのドクターもまた、アナコンダのように目立ちたがりのようです。
「えーい。らちがあかんッ。出てこいお前たち──!」
声をかけるといままでどうやって隠れていたのか、電信柱の影などからのっそりと、筋肉の塊のような男たちが次々と姿を現しました。
なかには工事用のカラーコーンの中から姿を現した男もいます。
ブーメランパンツ一つで、後は全裸。
頭にほっかむりをしている者や工事現場のヘルメットだけをかぶっていたり、だけど皆ブーメランパンツという格好は、かなりシュールな姿でもありました。
「「「えっ──その体でどうやって隠れてたの?」」」
「フッハッハッハ~~~! この肉体はな、すべて私が改良してやったのだァァ!!」
世界的なボディピルコンテストの優勝者が酷く貧弱に見えるほど。
画で描いてディフォルメしたような筋肉の塊。
それがポーズをとりながら近付いてくるのです。
怪物のように隆起した筋肉の塊は、テラテラと光っていました。
歩くたびに大胸筋がピクピクと動きます。
そして誰もが歯を見せて笑うと、ぴかっと光るような真っ白い歯。
「どうだマジカル娘。お前の学校の校長はな、私が送り込んだのだ。フフフ、あれよりもさらに進化させた、ピルドアップした肉体をとくとみるが良いぃぃ~~!」
顔を嫌そうにゆがめるこむぎ。
表情が「キモイ」といっています。
年頃の女の子ですから、筋肉の塊を見てもけっして楽しくはないのです。
ペロはこれはいったいどんな攻撃なんだという疑問を、あえて口にしませんでした。
変に刺激すると、面倒くさくなりそうだったからです。
「どうだぁ。凄いだろう。この筋肉の塊はな、厳しく辛いトレーニングなしで作られた肉体なのだ。まさに夢のような、ドーピング効果なのだァ!」
その時──。
「え~~~! それって私が狙われているってことよね。だって私、凄い美人だし、ナイスバディだし、そのために用意された男たちよね、きっと。絶対そうよ、間違いないわッ!!」
「えっ──そうなの?」
「いや、ちがう、って……」
予想外、いえ予想の斜め上を行く展開に気勢をそがれるドクターでした。
「この筋肉の怪物たち。こんな獣のような男たちが、私のようなセクシーで美しい女を放っておくはずないわッ! そして絶対に絶倫よッ!」
『こむぎちゃん、耳を塞いで──』
ペロの声に素直に従うこむぎ。
ペロはペットというよりも、こむぎの保護者のようです。
「あああ、ど、どうしょう。こんな怪物みたいな男たちに、私はきっと犯されてしまうんだわ。哀れにも、輪姦されてしまうのよ~~! だってこんなにいい女は他にいないから、男たちは獣と化して一斉に襲ってくるわッ!!」
「い、いや、そんなことは……」
いくら違うといっても、聞く耳を持たないアナコンダ。
戸惑い、困惑しきったドクター。
「そのために改良されているのよ。きっとそうよ。人並み以上の猛り狂ったぶっとい◯根に改造されているはずだわ。私の悩殺ボディを見て、性欲に狂った男たちが我慢できるはずないものーッ。よだれを垂らしながら、私を奪い合うように女体を貪ってくるのよ。私のマ◯コにすぐにぶち込んできたり、泣き叫ぶ私の可愛いお口にも、べつの男のチ◯ポがねじ込まれるのよッ。チ◯ポで頬を叩かれながら、しゃぶれと命令されてしまうのよォ~~!
それだけじゃないわ。飽き足らず、ア◯ルも一緒に犯されてしまうわ。三つの穴を同時に責めるのよ。きっとそうだわッ。容赦なく突き入れながら、私のオ◯◯コの中で果てるのよ。そんな私の痴態を眺めながら、残りの男たちも自分の手でチ◯コを扱きながら、私に◯液をぶっかけるわァァ。何度◯精しても衰えないように改良さているから、私の美しい顔と肉体が白い液体でヌラヌラにまるまで汚されるのよ~~!! ※想像してください」
「……そんな改良は、しとらんて……」
「あわわわっ。それだけで終わるはずがないわ。私が犯される動画をとって、ネットにながすとか脅迫するのよ。脅迫して、性◯隷にしようとするのよォォ~~~!」
「な、どうしたお前たち──!?」
見ると筋肉の塊のような男たちが、股間を押さえてうずくまっていたり、中には股間を両手で押さえながら、ゴロゴロと苦しそうに転げ回っている者もいました。
身悶えしながら、う~う~唸っています。
「チッ──そっちの対策を忘れておった。こんなことになるとは予想外だ。やるな魔法少女よ──しかたない。今日のところは引き上げるぞ。次そこ、決着をつけてやるからな」
捨て台詞を残して、ドクターと男たちはこむぎたちの前からすばやく立ち去っていきました。
いったい何しに現れたのでしょうか。
ドクターたちがいなくなっても、空を掴むように手の指をわなわなさせてひとり独白に浸るアナコンダ。
『こむぎちゃん、もう手を放して良いよ』
「わっ、すごーい。変な人達いなくなったね」
『ま、まあ…そうだね。この魔女のお姉さんの、おかげだよぉ』
「へーっ、やっぱり魔女って凄いんだ……」
こむぎは素直に、尊敬のまなざしを向けています。
ペロはどう説明してよいやら、分からなくなっています。
詳しい話しはもう少し、大人になってから話そうかと考えるのでした。
宙に視線を彷徨わせながら、まだ妄想劇を口走り続けるアナコンダを放置して、こむぎとペロも立ち去っていきました。
とても平和な昼下がり出来事。
ひとり取り残されたアナコンダは、この後警察官に挙動不審で職務質問を受けることになったそうです。
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