第8話 冒険者ギルドにて
レオニードに引きづられるかのように連れてこられた冒険者ギルドは、商人ギルドとは違い外観から豪華なものだった。
それだけ冒険者ギルドは栄えているということだろう。
しかも商人ギルドより一回りか二回りは大きい建物だ。規模がちげぇ。
「入るぞ!」
レオニードに言われるがままギルド内に入るとそれはそれは活気のある感じだった。
すると冒険者達の視線が一気に俺に向く。
……いや俺と一緒にいるレオニードに。
誰一人として敵意を向けている訳では無いが。
そんなことお構い無しにレオニードは俺を受付まで連れて行った。
「おい、ライラ!レイの登録を担当してくれ。」
「ギルマスお帰りなさいませ。喜んでお受け致します。」
「じゃあ、登録終わったら俺の部屋まで案内してもらってくれ!!待ってるぞ〜!!!」
にこやかにそう言ってレオニードは行ってしまった。
「冒険者ギルドへようこそ。登録用紙に名前、種族、年齢を記入していただけますか?」
ライラと呼ばれていた受付嬢がそう言った。
「……これで。」
「ありがとうございます。レイ・シルヴァさんですね。ではこちらのギルドカードに魔力を通してください。」
おいおい。魔力通すってどーやるんだ?
俺は元々この世界の人間じゃないから分からない。多分魔力持ちなら誰でも知ってるようなことだ、きっと怪しまれてしまうだろう。
『カードを持っている指先に集中してエネルギーを送るのだ。』
デウスにそう言われてやってみると案外簡単に出来た。
デウスがいなかったらどうなっていたことか。やれやれ。
「魔力を通していただけましたら終了です。
あとは自分のステータスボードを見たい時には同じくギルドカードを持って“ステータス”と念じると自分だけ見られます。
また“ステータスオープン”と念じると他人にも見せることが出来ます。こちらのギルドカードはレイ・シルヴァさんのものになります。
他人が使用することは出来ないようになっていますのでご安心ください。
それから冒険者にはランクがございます。
F〜Sまであるランクは一定数のクエスト、または個人依頼を達成して頂くことでアップしていきます。以上で分からない点などございますか?」
完璧な説明で分かりやすかった。
有能な人材だな。
「大丈夫だ。ありがとう。俺のことはレイでいい。」
「かしこまりました、レイ。それではマスターの部屋は2階へ上がっていただいて右奥の扉になります。」
レオニードとの会話を聞いていたらしいライラはご丁寧に部屋の説明までしてくれた。
コンコン。
「入るぞ」
部屋に入るとレオニードが待ち構えていた。
「おぉ来たか!!」
彼はどうも毎度の如く声が大きい。
うるさいくらいに。
ガタイもいいし声も大きいし現世でいう応援団長とかに向いてるタイプだ。
「レイに早速個人依頼を頼みたい!」
部屋に入るなりそう言われた。
「何がなんでも急すぎないか?
俺はさっき冒険者登録を済ませた言わば新人だぞ?」
しかもこの世界の人間じゃないので魔力が♾️でも使い方が分かりませーん、なんて言えっこないが。
「いやレイにしか頼めないことなんだ!魔力♾️のレイにしか!!!」
「とりあえず話は聞こう。」
「俺は元々、王家直属の騎士団にいた。冒険者として活躍し、その活躍を評価して頂き騎士団に入団した。その中でも俺は姫様の専属騎士だった。ある日、姫様が領地視察に向かった際に魔人に襲われてな。幸い命は助かったものの、姫様は魔人に呪いをかけられてしまった。」
「…呪い?」
「
「欲って例えば食欲とかか?」
「そうだ、どれだけ食べても満たされることのない食欲、寝ても寝ても解消されない睡眠不足。それと……」
レオニードが言いにくそうにしているのは三大欲求のもう一つ。性欲だろう。
「わかったわかった。で?俺は何をすればいいんだ?その姫様とやらにできることは限られているだろ?」
「レイにはその魔力がある!!姫様に定期的に魔力を供給してくれ。もしできるなら呪いについてもどうにかしてほしい!」
「一介の冒険者が姫様に手出しすることは許されるのか?」
「もちろん、国王に謁見は必須だ。」
それは困った。
忘れてる人もいるかもしれないが俺は元々は勇者召喚でこの世界に来たんだ。
スキル営業の商人だったから追い出された訳だけど。
勇者召喚でこの世界にやってきた俺のことを知っているのは限られた人間だけだろう。
でも国王はあの召喚の間で顔合わせてるから謁見はまずいな。
俺は別に何も恨んじゃいないから協力してもいいが、姫様ってことは国王の娘な訳で、娘の呪いをハズレの俺に任せる訳ない。
「……いやだ」
「なぜだ!?」
「……俺硬っ苦しいの無理なんだよ、王様とか絶対会いたくないね」
硬っ苦しいのが苦手なのも本当だ。
「う〜ん。ちょっと待ってろ!!」
そう言って何かを思い出したように出ていったレオニードは数風後ガッシャガッシャと音をたてて漆黒の鎧を持ってきた。
「これをつけてならどうだ!?」
レオニードが持ってきた漆黒の鎧を鑑定してみると…
【
【鎧は魔力を喰らう。喰らった魔力に比例して強度も増す。】
魔力♾である俺の為に創られたような鎧だ。
「この鎧、レイのために創られたかのようなものだ!!この鎧を着てなら謁見してくれるか!?王様に会ったら面倒だから断るって言ってんなら鎧を着て顔を隠せば問題ないだろ?」
レオニードが必死にそう言ってくるものだから
「分かったよ、だけど条件がある」
「…な、なんだ?」
「いくら王様だろうが俺に命令はするな、俺は自分のしたいようにする」
何故俺がこう言うかには訳がある。
ラノベでよくある王女と結婚作戦を阻止する為だ。
結婚したが最後、面倒くさい政権争いに巻き込まれるだけだ。
「…俺から伝えておく」
レオニードは渋々承諾してくれた。
早速もらった鎧を着ると魔力が吸われていく感覚がした。
「レイ!似合うじゃないか!!」
「…どうも。俺もしっくりきてるよ。」
着け心地も最高だ。本当に俺のための鎧だな。
――ピロン!
目の前にステータス通知が表示された。
【
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