Greedy
どこぞの山田さん
入口
カチ、カチッと蛍光灯から音がする。
ここはバスルーム、全体が黄色に黄ばんでいて浴槽には茶色の錆のようなものも付いており、もう使えそうにない。
そんな空間に一人、体育座りで蹲っている。
少女は呟く。
「愛されたい…」
その言葉は決して軽いものではなかった。何もかもを考えに考えて出た言葉ではなくただ、少女の生きてきた人生の中で零れてしまった言葉。
「友達でもいい、恋人でもいい…家族」
愛されたいとまたもや呟く。
しかし、うずくめていた顔を見れば誰だって分かる。自身の求めることが何も手に入らなかったすべてを諦めている顔、先ほど呟やいてやいていた言葉「愛されたい」も叶わぬことを知りながら出てきた願い。
「なんて、あるわけないか。 そんなこと」
______________________________________
その瞬間、強烈な頭痛が襲う。
頭が割れそうな程の激痛が走る、視界が揺らぎ立てないほどの。
耳鳴りがなり始めた時、目の前にある扉が開く。
体が動かない…何もできない…。その人影が何かを取り出す、しかし、すぐにそれが何か分かった。自身が何よりも信じてきたものであり、安心するもの。
だが、相手が持つと凶器であり、恐怖を抱くもの。頭にソレを、拳銃を突き付けられる。体全体に恐怖が支配する、頭の中が高速に回転しているように感じるが、どうしようという考えで一杯だ。
相手が引き金を引き始める。
頭痛で体が動かない、どうすることもできない。
諦めた瞬間、耳鳴りが消え人影から声が聞こえた。
「もう、諦めたよ」
その言葉の意味を考える時間もなく、弾丸が放たれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます