第四章 票
第24話 記憶4
異世界へと誘う数多の扉を、俺は幾度も開けてきた。夜が更けても枕元の明かりで読みふけった。開いたままの頁から世界が流れ出してしまう気がして、ちょっと席を立つときでも、しっかりと表紙を閉じていた。
異世界で何度も体験した劇的な出来事は、自分の身に起こればまるで悲劇だ。
実家の掘り起こしと、家に寝に帰るだけの毎日。両親の跡も継がずに得た書司での左遷。やりたいこととやるべきことと、やった方が理想のこととの板挟み。泣き言を言う暇もない日が続いていた。
その日常が変わったのは、彼女に会ってからだった。
彼女のおかげで、俺は両親の遺言を目にすることができた。
今までの俺は不安だったし疑っていたのだろう。でも、俺は確かに両親に想われていた。
全てが終わったら。それがどんな結末でも。
自分のために、お茶を煎れよう。陽当たりのいい簀子で、うとうとしながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます