第12話 新たなる旅立ち

 初夏の朝、東京を出発した僕は新幹線の窓から流れる景色に心を奪われながら熱海に向かった。熱海の駅は早朝の柔らかな光に包まれ、ほのかな海の香りが漂っていた。駅の周りは、夏の訪れを告げるような明るい花々で飾られていた。


 熱海から伊東へと向かう電車に乗り換えた。伊東に下車することは彼女の日記には書かれていなかったが、何となく彼女もこの街を訪れることを想像できた。海に面したこの小さな町が、彼女に新しい何かを感じさせたのではないかと思った。


 伊東の駅に着いて、僕は海辺に近い小さな食堂で朝食を取ることにした。店内は昔ながらの落ち着いた雰囲気で、窓からは静かな海が見えた。朝食には地元で獲れた新鮮な魚を使った刺身が出され、その味は海の新鮮さをそのまま伝えてくれた。食事をする間、僕は窓の外の海を見つめ、彼女がここで感じたであろう穏やかさと自由を想像した。


 食後、僕は伊東から伊豆急行に乗り、下田への旅を続けた。列車が緑豊かな山々を抜け、再び海岸線に沿って進むと、目の前に広がる海はまるで別世界のようだった。波は静かに岸に打ち寄せ、海と空の境界はぼんやりと霞んでいた。


 下田に到着すると、僕は彼女が日記で描いた「青い海と空が出会う場所」を探しに行った。町を抜けると、そこに広がるのは絵画のような美しい海岸線だった。砂浜に足を踏み入れると、足元には柔らかな白い砂が広がり、波の音は心地よいリズムを奏でていた。


 夕陽が海に沈む頃、僕は彼女の失踪を新しい人生への一歩として受け入れる。彼女の残した日記、彼女の言葉、そして伊東と下田での僕の体験。これらは彼女が求めた新しい始まりを示していた。僕もまた、彼女の失踪をきっかけに、自分自身の新しい道を歩む準備を始める。

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午後のジャズと消えた恋人 モノック @monoq

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