【年末年始は不定期投稿になります】俺たち青春活動部!
向井 夢士(むかい ゆめと)
1章 出会い
第1話 勧誘
――青春とは何だろうと考えたことはあるだろうか。
友達と遊ぶこと? 恋愛? 勉強や部活? 趣味?
青春は、人それぞれだと思う。ただ一般論としてだと、恋愛や親友とかと遊ぶことが思い浮かぶ。
恋愛したい、遊びたいという心の根っこには楽しみたいという気持ちがある。それは当たり前の事だろう。学校生活は短いものでもないし、嫌な思いをして学校に行きたいと思う人はいないだろう。
けどそこには学校特有の壁がある。集団生活であるが故にいじめや喧嘩なども起きる。人間関係をシャットアウトしてなら問題は起きないとは思うが、学校生活ではそれも難しい。
俺も楽しみたいと思っていたし、皆と仲良くしたいと思っていた。イケイケな陽キャと言う奴だろうか。青春とやらに憧れていた。
ただ俺はある事件を機に、青春とやらの理想は崩れ去った。と、いうより人間関係の難しさに直面したといえるか。
それから俺は良くもなく悪くもなく、真ん中の立ち位置を目指している。まぁ話せる人というか、別に仲悪くもないがそこまで仲良くないみたいな。
あー本当に人間関係って面倒くさい。自分と波長が合う奴もいる。ただそういった親友と呼べる奴はごく少数だ。基本は合わないか関わらないか……それとも本音を隠して関わるか。
まぁ何はともあれ、俺は昔の事を引きずっている。本当に人生って、難しい。
「なぁ春風? お前はこんな単純な事もできないのか? もう高校生で大人になるんだぞ?
「全くなんでこんな簡単な事が出来ないんだ? ただ部活を決めて入部届を提出するだけだろう?」
「いや入りたい部活がないというか。何で一年生は入部が強制なのかもわからないし」
なぜ部活に入らないといけないのか本当に疑問である。入りたくないこっちの身にもなってほしいものだ。
「あのなぁ。入ってみたら楽しくて続いたりするかもしれんだろ。それに部活に入らないと学校生活が楽しめないぞ?」
あのぉ、じゃそれデータとかあるんすか? という論破おじさんの言葉を何とか抑え込み、どうにかできないものかと考える。
中学の事もあるし、なるべく部活には入りたくないが……まぁ一人で静かにできる文化部とか探してみるか。幽霊部員になってもいいし、2ヶ月ぐらいでこっそり辞めても良いな。
「そこまで言うなら考えてみます」
俺はそう言って職員室を後にした。こういう時は心を無にして、適した言葉をただ発する口の運動をするのがベストだ。
さて、これからどうしようかなと考えていると後ろからトントンと肩を叩かれた。
「あっ、ゆいねぇじゃん」
「こら、学校では桜庭先生でしょ?」
俺が“ゆいねぇ”と呼ぶこの若い女性の先生は、
俺とゆいねぇは元々同じ団地に住んでいた。元々俺の父親は単身赴任で、母親と二人で主に暮らしていた。ただ少し前に祖母の調子が悪くなってしまい、大事には至らなかったが介護が必要になった。祖母の意向もあり、母親は祖母の介護を主にすることになった。祖父もあまり元気ではないし。
そんなわけで一人暮らしのようになってしまった俺だが、家事はお世辞にも出来るとは言えない。よって生活が壊滅的になるということだ。証明完了 Q.E.D!
そこで仲が良かったゆいねぇが、良ければという事で最近から助けてもらう事になったのだ。家事を手伝ってもらったり、色々と作り置きしてもらったりと俺からすれば神のような存在である。
ゆいねぇと仲良くなったのは、自治体のイベントで一緒に遊んでもらったことがきっかけだ。まだガキだった俺は、綺麗なお姉さんに惹かれたのかもしれない。今思うと初恋だったかもな。
それからゆいねぇと会ったときはちょくちょく話すようになり、一気に仲良くなった。よく勉強とか教えてもらったり、相談にも乗ってもらったりしていた。
先生にはなりたいと話していたし、どこの高校かは知らなかったが、合格して先生になっていたこと自体は知っていた。ただこの学校にはいると思わず、入学式ではとても驚いた。てか受験勉強も忙しいのにも関わらず助けてもらってたし、俺の志望校知ってたじゃん。意地悪な女だ……
今は社会人になったの事で、両親から経験の為と言われて、実家暮らしではなく学校に近い所で一人暮らしをしてるらしい。確かに大学も実家から通える所だったし、俺も一人の時に思ったけど、一人暮らしは経験した方が良いなと思った。まぁゆいねぇに頼っている俺が言えることでもないかもしれないが。
ちなみに先生と生徒が出会うのは犯罪では? と思ったので、この前ゆいねぇに
「てかこれって大丈夫なん? 仮にも生徒と先生でしょ?」
と言った。するとゆいねぇは、
「ゆっくんは私といかがわしいことしたい?」
と笑いながら言ってきた。ゆいねぇは確かにきれいだが、今となっては家族のような感じだし、昔のような恋愛感情もない。
「しねぇよ。関係ぶっ壊れるじゃねぇか。それに俺はただ助けてもらってるだけだし」
「でしょ? ただ助けてるだけならセーフ。まぁ世の中には勉強を教える、とか部活やクラスの集まりでしれっと先生と生徒で仲良くなってそういう事になるパターンもあるけどね」
「それはそれは恐ろしい……」
との事だった。世の中って本当怖いねマジで。まぁ、ゆいねぇとは昔からの関係だから大丈夫だろう。うん大丈夫、たぶん。
話を元に戻そう。俺は職員室を出たところ、ゆいねぇに肩を叩かれたのだ。
「ごめんごめん。つい癖でゆいねぇって呼んじゃうんよね」
「まぁ良いには良いけど、一応先生と生徒だからね。学校では気を付けてよ?」
「はいはい分かりましたよーっと。それで何か用?」
「入学して早々怒られたじゃん。部活は何か候補あるの?」
何だ、俺が怒られているところ見てたのかよ。性格が悪いな。
でもゆいねぇの質問は、俺の核心をついている。
「まぁやりようはあるし、どうにかなるでしょ。それにゆいねぇは中学のあの事知ってるでしょ? 少なくともチームで何かするとかはごめんだね」
俺が少し強く言うと、ゆいねぇは待ってましたみたいな顔をして
「なら青春活動部に入らない? 私一応、顧問というか担当教員」
と少し笑いながら俺にこう言った。
「は?」
ここから俺の第二の青春が始まる――
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