第30話 たおされた
みえない怪獣は最後、何かに倒された。
その場にいた者にはそうとしか見えなかった。みえない怪獣が何かに倒された。
誰もショウを見ていなかった。ショウもそれ見ていた。
均衡を失った建物の鉄骨か大きく歪んだのか、ぎいい、というチェロを、しくじって弾くような音が聞こえた。みえない怪獣の断末魔にも聞こえた。真実は不明だった。鉄骨が曲がっているのか、曲がればそんな音が出るのか、誰もその場所には近づけず、知ることはできない。人がいるべき場所でない場所で起こっている。人間たちは、遠く離れた場所で観ているだけだった。
みえない怪獣が倒れるはずはなかった。すべてを破壊して、通り過ぎるはずだった。だが倒された。何ものかの倒されたようにしかみえない。
どうやったらあんなふうに倒すことが出来たのか、ショウにはそのやり方がわからなかった。
目にした人々からの感嘆の声は少なく、ほとんどは茫然としていた。
作品は人々の時間を止めていた。
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