第15話 幼馴染、激しく嫉妬する「はあ、はあ、はあ……しかも、クイックアリスとイチャイチャしちゃって! 優斗にはまだそういうの早いのっ! 幼馴染のあたしがいるのに……っ!」 幼馴染視点

「はあ……今日も優斗いないわね……」


 ここは亜美の自宅。


 亜美は自分の部屋の窓から、優斗の部屋を見ていた。


「昔はよく、窓から優斗の部屋へ行ったなあ……」


 亜美と優斗の家は、隣同士。


 子どもの頃から、家族ぐるみの付き合いで。


「優斗のお父さん、息子が行方不明なのに心配じゃないのかな……」


 優斗が実家に帰らなくなって、すでに3日は経っている。


 (実の父親なのに酷すぎるっ! 大学落ちたくらいで家を追い出すなんて……っ! 最低よっ!)


 自分を棚に上げて、優斗の父親を責める亜美。


「せっかくあたしが東大に合格したのに……優斗がいないんじゃ……」


 (あたしは優斗と東大に通いたかったのに! どうして落ちちゃうのよ……っ!)


 亜美の理想——優斗と東大で青春を謳歌することだった。


「……同じサークルに入って、学園祭回って、海外旅行に行って、一流企業に入って、結婚して、子ども作って——」


 亜美は自分の胸を、ぎゅっと掴む。


 (なんでこんなに、苦しいのよ……っ!)


「あたしの理想を……優斗が壊したのよ。落ちたあんたが悪いのよおおおおおおおっ!」


 夜空に向かって、叫び出す亜美。


「はあ、はあ、はあ……しかも、クイックアリスとイチャイチャしちゃって! 優斗にはまだそういうの早いのっ! 幼馴染のあたしがいるのに……っ!」


 ぼふっ!


 イラついて、亜美は枕を殴った。


「あたしのせいじゃないわよね? あたしがいるのに他の女と仲良くするなんて……不誠実な男っ!」


 ぼふっ! ぼふっ!


 さらに強く、枕を殴る。


「もしかして……あたしが振っちゃったから?」



 ——亜美はこの後、思い知ることになる。


 自分が取り返しのつかない過ちを、犯したことに……


 後悔しても、もう遅い。

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