第8話 幼馴染とばったり会ってしまい、お姉さんはブチキレる「人の価値を学歴で測るような人、大大大大大嫌いなのっ!」

「今日はお鍋にしよっかっ!」

「いいですね。今日は寒いですし」


 お昼になってから、


 駅前で愛理さんと買い物することに。


 今日の飯と、生活に必要な物を買う。


 この身ひとつで家を出てきたから、俺に何も持っていないわけで。


「そうだなあ……まず、服から買おうかっ!」

「はい……でも、俺、お金がなくて」


 今、俺の持っている服は制服のみ。


 何より俺の所持金は、3000円しかない。


 これでは、シャツ1枚買えるのがせいぜいだ。


「ふふふっ……愛理お姉さんが買ってしんぜよう」

「あの、何のキャラですか……?」

「ぶーっ! お姉さんがせっかく貢いであげるのに!」

「いやいや……貢ぐって……」


 しかし、金のない俺にとって、


 愛理さんの申し出は有難いものだ。


「ありがとうございます。実際、すごく助かります。絶対にあとで返しますから……」

「ふふ。素直でよろしい! 出世払いでいいよーっ!」

 

 愛理さんは俺の頭を撫でる。


 まるで小さな子を、あやすみたいに。


「……つっ! 恥ずかしいからやめてください!」

「くっくっく……! お主、かわゆいのぉ〜〜っ!」

「どこの悪代官ですか……」


 愛理さんにダル絡み(?)されながら、


 駅前のデパートの服屋へ行く。


「優斗くんは、どんなパンツを履くのかな〜〜?」

「どんな性癖……?」


 着いていけない時もあるけど、


 なんだかんだで、俺は楽しんでいた。


 ここ最近、ずっと受験勉強ばかりしてたしな。


 と、思っていた矢先——


「…………」

「どーした? 優斗くん? もしかして、愛理お姉さんの美貌に、見惚れちゃったかーっ?」

「…………亜美だ」

「アミ……? 誰のこと?」

「昨日話した、俺の幼馴染です」


 よりにもよって、こんな時に。


 亜美と遭遇するなんて。


 あ、ヤバいっ! 


 亜美がこっちに気づいて——


「……優斗じゃん。こんなとこで何やってんの?」

「お前こそなんで……?」

「買い物に決まってるじゃん」

「俺も……買い物だよ」

「ていうか、あんたの隣の人——ま、まさか……クイックアリスさんっ!?」


 俺の隣にいる愛理さん見て、


 亜美はめっちゃくちゃ驚く。


 まあ、無理もない反応だ。


 人気配信者の女の子と俺が、一緒にいるのだから。


「な、なんで……? なんでクイックアリスさんと優斗が一緒にいるの……っ? あり得ないんだけど?!」

「……あなたが、優斗くんを振った幼馴染ちゃん?」

「どうしてそれを……? そんなことより、サインもらえませんか? あたし、東大に入ったらクイックアリスさんみたいになりたいと思って——」


 亜美は、クイックアリスの熱烈なファンだ。


 東大に合格したら、自分もクイックアリスみたいに、【美少女東大生アイドル】として、TVに出たいとよく言っていた。


 だから亜美にとって、クイックアリスは憧れの存在……


 だったのだが。


「……あたしは、人の価値を学歴で測るような人、大大大大大嫌いなのっ! サインはぜーったいにしませんっ! 優斗くんとあたしの時間を、邪魔しないでくださいっ!」

「え? 違いますよっ! 優斗に嘘を吹き込まれたんですね。あたしに振られた腹いせに——」

「優斗くんは、すっごくカッコいい男の子なのっ! あなたには勿体無いっ! 後できっと、あなたは後悔するっ! その時は、【もう遅い】からねっ!」

「はあ? 何言って——」

「さっさとあっち行きなさいっ! 早く消えないと、ぶっ飛ばすわよおおおおおおおおおおおーっ!」


 デパート全体に響くデカい声で、


 愛理さんは叫んだ。


「クイックアリスって、アホなのね……せっかく推してたのに損したわ」

「はあ、はあはあ……あなたみたいなダンゴムシに、推しもらわなくて結構です! こっちから願い下げっ!」

「ふんっ! 後でコメント欄に悪口書き込んでやるんだからねっ! ばーかっ!」


 亜美は捨て台詞を吐いて、


 スゴスゴと去って行った——



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