49 前回までのあらすじ!

 ごめんごめん、急に回想とか挟んじゃって。わかりにくくなっちゃったかな?

 思想とか出すとSNSも離脱者が多くなっちゃったとかいうし、私の発言で不愉快に思っちゃったひとがいれば申し訳ない。

 でも最初から私は言っていたよね。


 このゲームには、悪役令嬢はいないんだ、って。


 此処まで読んでくれた君たちが、このくらいの悪役令嬢disぐらいで見放しはしないと私は信じているよ。そもそも私は乙女ゲームにおける悪役令嬢を否定しているだけであって、他のジャンルでは結構好きなんだなあ。実際に作品読んでみたりアニメで見たりするとおもしれーじゃん、って思ったもん。

 矛盾してる? そうかもだけど、それが人間ってことでひとつ。


 では、話を元に戻すとしようか。


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 およそ5パーセントの力で手合わせしてくれるというベリーイージーモードで大敗を喫してしまった本ゲームの絶対的ヒロインこと私、ローゼル・ベネットと、モブという立ち位置ながらツンデレ×ナルシストの美少年という奇跡の個性を発揮して頭角を現したソウビ・ラスターシャ・有馬。


 い、一か月後に優勝できるんでしょうか、マジで。

 というところだったわけです。

 思い出していただけましたでしょうか。


 ここはもう、少年漫画的な修行が必要だよね、と私。ソウビが「はァ?」と若干切れ気味の相槌を打った。


「うむうむ。やはりおぬしら諦めた方がよいぞ? さすれば儂が出場し、今大会も優勝を掻っ攫えるというもの」

「あんたはまだ大会連覇を狙ってたんかいっ」


 このじじい何回優勝すれば気が済むんだよ。大人げねえぞ。


 ていうかあの坂野がキャラデザした悪役令嬢がぽんっとこのゲームでは主人公扱いになっているわけで。これ、悪役令嬢勝利ゲームに書き換えられてるってことだよね。

 むしろ私たちがバグとかエラー扱いにされてない……?

 おいおいおいおいおい世界が「私」を消そうとしているって、あの某有名かつ私の大好きな乙女ゲームのヒロインちゃん(ネームレス)と同じ立場になってるってこと? えっ、ちょっと嬉しいかも……嬉しがってる場合じゃねえや。

 とりあえずどのゲームかわかったひと、私と握手ね!


 ねえねえねえ、呑気なこと言ってる場合じゃないぞ。私、もしかすると死んじゃうじゃん⁉


「リューガせんせえ!! 私っ、魔法戦闘がしたいです………」


 でもって、単位貰って、そんでもって悪役令嬢に平手かましてやりたいんです。

 あとついでにメイン攻略対象のエリアスを這いつくばらせてソウビに言ったこと撤回させて私のことをローゼル様と呼ばせてやるのだ(ここまでノンブレス)。


「だからなんじゃその腹立つかんじ……」

「ええっ、様式美って大事じゃないですか?」


 まあ異世界人いせかいんちゅにはこのネタはわからないかもしれないですけどね。


「ンン、いいケドねェ。ボクはひよこチャンともうチョットだけ遊んデあげテモ」

「およ? 本気か、ウィス坊よ……まさかこのがきんちょに惚れておるとかではなかろうな」

「なんだって⁉」


 そこんとこ詳しくお願いします。攻略対象に想いを寄せられるのは乙女ゲームとして当然のことなのだけれど、ローゼルのどのあたりが刺さったのかリサーチしておきたい。開発者としては。


「……ン~どうかなァ。面白イだなァとは思ウけどネェ。性愛の対象となるカは別問題じゃないかナァ」

「えっ、もしかして私いま振られました……?」

「――ハっ、だっさ」


 えーん、ソウビが鼻で笑ってくるよう。ズッ友のくせにいつまで経っても辛辣なんだから、こいつめ。愛いやつよのう。にまにましていたら、鳥肌が立ったらしくソウビは両腕をさすっていた。美少年は軟弱だなあ。


「まあ、その心意気やよし。儂も一度鍛えてやると言ったんじゃから、男に二言はないぞ?」

リューガあんざい先生っ!」

「誰じゃそやつは」


 もう突っ込むのも疲れたと言いたげなうんざりした顔でリューガは言った。


「まあ、それほど言うのじゃから、おぬし覚悟はできておろうな」

「ん……?」


 何? 何なの? 何の話なの?


「……ウィス坊」

「はいはーイ。予想どおりダからもう発動済ダヨ――ねえ、ひよこチャン」

「な、なんでしょうっ、か⁉」


 カデンツァが私の頭に手をかざした――と思ったらちょこんと何かが乗っかって来た! 

 何? 私の頭に上に何があるのこれ! 

 恐る恐る手を伸ばしてみるとなんだか生温かくて柔らかな手触りだった。

 こっわ! えっ何、これってもしかして箱の中身はなんだろなゲーム⁉


 動揺する私をよそにソウビがカデンツァに「それ時計鳩ですよね」と話しかけていた。

 時計鳩……? なんだっけ、ええっと、うーんと。


「…………時計鳩、ってあの」

「乗っかった相手がミッションクリアすルまで、1日を無限ループさセる能力を持っている可愛イ可愛イ魔獣ダヨ」

「そんな激やばな生き物を勝手に頭に載せるな⁉」

「くるっくー」


 おい鳩。くるっくーじゃないねん。まじで。

 1日無限ループ⁉ 


「そうじゃな。50パーセントの力を発揮した儂らと戦って勝てたらループ終了ということにしてやるとしようかの。めんどくさいのに付き合ってやるんじゃから感謝するんじゃよ」

「5パーセント程度でも勝てないのに……?」


 カデンツァは揉み手しながら私を見ている。「グフ、まだまだ、思ウ存分ひよこチャンで遊べルねェ」なんて言いながら……ぞっとしてしまう。寒気が。インフルエンザもらってきたときでも感じたことのない悪寒がいま私の両肩に。

 ていうか、ずっと勝てなかったら私ループに閉じ込められたまんまってことじゃん! 変態とウサ耳マッチョと共に。そんなヘキの大集合みたいな連中といつまでもつるんでいられないですわよ。


「そんな殺生な。堪忍して……」


 あのさあソウビは知ったこっちゃないって顔してるけど、私達は一蓮托生だかんね! おまえもつけるんだよこの鳩を。

 もちろん、そうでしょ、そうに決まってるよね。


 ねえ、ソウビ私達ってまだ友達だよね……?

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