50 スパルタ特訓、しゅうーりょー!!
終わりました。
燃え尽きましたよ、何もかも――。
ばた、とカデンツァの遊戯室の床に私は倒れ伏した。
バトルステージを投影するモードは解除されて、ただのお部屋だ。意外と居心地よくしつらえてあって、ソファなんかも実はあったりするのだがそこまで這っていく気力もなかった。
ていうか体感これ何年あった……? 数か月どころじゃないよねえ。年単位だよねえ。
とことんゲームの周回やらされた気分だよ。でも頭はめちゃくちゃ使ってたからしんどかったよ。まる。
「ンフフ、ひよこチャン頑張っタねェ、いい子いい子」
カデンツァがよしよし、と私のぼさぼさに乱れたピンク髪をはぁはぁしながら整えた。正直に言っていいすか。キモい。
「べたべたすんなこのド変態が!」
「ンンンンンンっ! もっト、モットダ、力を込メて罵ってッ」
自分の身体を抱きしめアアアアと身もだえするカデンツァから私はそっと目を逸らした。こいつとよくも無限ループバッドエンドみたいなとこにいて精神ぶっこわれなかったな私。
「おぬしらはずっと騒がしいのう。少しはソウビを見習うがよい」
「いやその、ソウビはもう喋る気力がないんだと思います……」
私の美少年、なんかめっちゃ曇っていた。目が虚ろだし、顔色悪いし壁にもたれかかって呼吸さえも省エネしていそうな感。
か、可哀想……。ごめん、付き合ってくれてありがとう。私達一緒に優勝するんだもんね。ね!
ソウビがぼそりと呟いた。
「あんたと組むんじゃなかった……」
「えろうすんませんでしたあっ!」
土下座しました。
土下座文化がこの世界にはないらしく、めっちゃ引かれました。額床にこすりつけて、って謝罪の定番なんだけどなあ。私の人生初土下座を捧げたっていうのにクールなんだから、ソウビきゅんは。
「まあおぬしらはよく耐えたと思うぞい。正直、途中で投げ出すじゃろうと思っておったのじゃが……みっちり付き合わされて迷惑じゃったよ」
やれやれとリューガはウサ耳をへたりと垂らした。
私が無限ループで特訓地獄させられて、途中でギブアップすると思っていたらしい。社畜で良かったね……。よくないけど。健全な精神は健全な肉体に宿るんだよ。
「と、ということは……」
リューガとカデンツァが顔を見合わせた。
「合格じゃ」
「うンうン。ボクたちを除いては、キミたちに勝てる子はイなイんじャなイかなァ?」
やったー! これで【
くるっぽー、と鳴き声に視線を向ければいつのまにか私とソウビの頭からカデンツァの両肩へと時計鳩が移動していた。
カデンツァは二羽の鳩たちを優しく……まるでハンカチか何かのように白衣のポケットの中に仕舞い込む。何、どっか別の時空に繋がってんの、そのポケット。
テンションがうぇいうぇいしてる私とは真逆で、ソウビはいまだグロッキーだった。心を強く持ちたまえよ。私なんかもう二、三年もこのゲームの中に体感いる感じなんだぞ?
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