生きる意味

残月

短編

屋上のフェンスに足をかけ、乗り越える。

 

 その先にある小さな足場に足をつき、

 深く呼吸をする。


 何故こんな行動を取ったのか。

 

 ただ生きるのがめんどくさい。


 それだけだった。


 ――――――死のう――――――


 そう思ったのはいつからだろうか。

 

 僕はあまり話さない内気な性格だった。


 学校は勉強ばかりで話す

 友達もろくにいない


 そのくせ勉強ですら下の方。


 自分の強みなんでないのではないかと

 思った。


 そんな"才能"のない自分を恨んだ。


 周りの"才能"であふれるやつらを妬んだ。


 自己主張ができないせいで

 いじめられもした。


 大人になっても同じような生活を送るのか


 つまらなくてめんどくさい


 そんな生活を。


 やっぱり


 ――――――死のう――――――


 このまま死んだならなんと思われる

 のだろうか。


 『そんなつまらない理由で死ぬのか』


 そう思われるのかもしれない。


 まず見向きもされないのかもしれない。


 悲しむやつなんていないんじゃないか?


 「楽になろう」


 覚悟するために空を眺める。


 日がほとんど沈み、人の顔が判別できない

 くらいの明るさになっていた。


 これが黄昏時というものなのか。


 「皮肉だな」


 僕の身体は宙を舞い、重力に従って

 落ちてゆく―







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生きる意味 残月 @askgo

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