少女は罪人島の夢をみる
ワシュウ
第1話 プロローグ
「オラァ!」
ドボンッ
女が1人乱暴に船から突き落とされた
「ガボッ…何を、ゴボッ」
「世紀の魔女大罪人さんよぉ、この島流しも久しぶりなもんでなぁ。最後に来たのが20年以上前じゃあ、前に来た奴もとっくに骨んなってんだろヒャッハハ!
お前さん、屋敷の使用人や馬丁、行きずりの男までヤり尽くして病気だらけなんだって?ウェッ抱く気もおきねーよ。じゃあ達者でな」
「グッ…私は魔女じゃない!冤罪よ!細川様がっ私の婚約者の細川様に私の現状を伝えてよ!」
「はぁ〜?お前さんバッカだなぁ
知らねーでここまで来ちまったのか?その細川さんがお前をここに送ったんだよ!
まあ、お前さんはやり過ぎたんだ、しゃーねーよアハハハ」
無慈悲に小船は母船に帰っていく。
必死で小舟を追いかけるも止まってはくれない
船から総督が双眼鏡でこちらを覗いてるのだろう、諦めて陸を目指す。
女が島に上陸する頃には母船は動き出していた。
疲れてフラフラと裸足で歩く。
足の裏が痛い、砂利とゴミ混じりの砂浜に空は黒く雨が降りそうだった。
鬱蒼とした森は苔と汚れで腐ちかけた骸骨が木の枝にいくつも引っ掛けられていて、地面にはバラバラになった骨らしきものが散らばっていた。
かつて人間だった物が無惨にも転がっている、それは女の生きる気力を奪うには十分だった
キラリと光るナイフが1つ
「お父様お母様お兄様…みんな…私のせいでごめんなさい。私をハメた全てを呪ってやるわ!……くっ」
静かに事切れた女の前に、老人が1人と鎧武者
「ヤレヤレ、久しぶりの島流しの罪人は…なんじゃコリャ?
ずいぶんと若いお嬢様さんじゃないか。被検体に使えんなぁ…ゴボッゴボッカハッ…」
老人の口には血が滲んでいた
「ハァハァ…ワシも長くない、次がいつかわからん…仕方ない…持って帰るぞ」
「御意」
プルルル プルルル プル…
「もしもし…ワンコールで出ろボケッ!
そうワシ、ワシ、ワシじゃ!馬鹿野郎!ワシの他におらんじゃろがい!
バイオポッドの準備しとってくれ、あと風呂の用意!そう!久しぶりの島流しじゃ!雨降ってきて足がドロドロじゃ。ほな、すぐ帰る」
ポツリポツリと降り始めた雨は、女の痕も老人の痕も全てを流してしまった
薄暗い地下の実験室
検死台の上に乗せられたのは、まだ新しい若い女の遺体
「筋肉は少ないが発育は良さそうじゃ、全体的に無駄肉の少ない体じゃわい。健康で若い内蔵が無傷じゃな、そのまま使おうかのぉ
おや?この歯の感じ、もしやまだ10代??伴天連の娘は体格がええから分からんかったわい!
10代の娘がどんな業を背負えば島流しにされるんじゃ…世知辛いのぅ」
50年前、かつてこの島に本物の大罪人として流されてきた世紀の大天才にしてサイコパス・マッドサイエンティスト
実験と称して殺してきた生き物は数えきれない
時は、明治の文明開化
西洋の文化を取り入れ、街では華やかなドレスの貴婦人が歩いていた
歴史の闇に葬られた大天才による世にも悍しい実験がまた始まったのだった。
台風が急接近して外は暗く豪雨だった
もっとも、地下の施設には何ら影響は無かった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます