第47話 朝礼となる

 翌朝、作業開始前にボクは工房で働く全員を集めた。


「おはようございます。今日から朝礼を行うことにします」

 これから毎朝、その日の計画や連絡事項を伝えるとみんなに説明した。


「それと、今日からの方と、一緒に仕事をしてもらうことになりました。それぞれ自己紹介してもらいます」


 まず、最初は――


「ディーノ・クリオーネです。冒険者をやってましたが、ご縁があり、ココで魔石の魔法封印作業を手伝わせていただくことになりました。ココは、キュートなレディが何人もいるので、とても気に入りました。よろしくお願いします」


 そう言って、前にいた、タバサに向けて軽くウィンクする。


「ヒロト、オレ、こいつキライ」なんて、タバサがムッとした顔で言う。コラコラ、初対面でそんなことを言うんじゃない。


「これは手きびしい――」

 言葉とは裏腹に、ディーノさんはとてもうれしそうだ。


「これから、親睦を深めましょう。ボーイッシュなお嬢さん?」


 懲りずに、そんなことを言うから、タバサは「ケッ!」とあからさまにイヤそうな顔をする。


 うーん、この二人、両極端なんだよなあ……

 また、悩みのタネが増えたと頭をく。



 次に、赤い髪の少女が挨拶あいさつする。


「メルダです。帝国のコルネード商会で働いてました。できるだけ早く仕事を覚えて、みなさまのチカラになるように努力いたします」

 落ち着いた声で自己紹介したあと、深々と頭を下げた。


「こちらのお嬢さんもお美しいですね!」と、まだディーノさんが絡んでくる。この人は女性をめないと気が済まないのか?


 すると、彼はメルダの耳元でそっと話しかけた。何を言っているのかは聞こえなかったが、それで、メルダの顔が急に青くなる。


「メルダさん? どうかしました?」


「い、いえ、なんでもありません」

 そう言って、彼女はうつむいてしまった。

 

 そして最後に――


「マリー・アウグストです! この工房の家事をするように侍従長から言われてきました。よ、よろしく、お、お願いします!」


 黒のワンピース、白いエプロンという姿。いわゆるメイドの格好をした少女が何度も頭を下げた。


 自己紹介にもあったとおり、ココの家事を見てもらうように、王室の侍従長から派遣してもらった。ただ、今日からだとは事前に話を聞いていなかったので、少々ビックリしたのだけど。


 でも、これでアリシアの負担がずいぶん減るはずだ。



 それから、今日の予定をみんなに話す。


「――以上です。なにか質問はありますか?」

 するとディーノさんが手をあげる。


「私はどうすれば?」

「ああ、ディーノさんはアリシアから魔石に魔法を封じ込める方法を教えてもらってください。そして、メルダさんは私が発注のやり方をお教えます」

 メルダさんは黙って頭を下げた。


「あのう、私は?」と言ったのはマリーだった。

「マリーさんは、お洗濯をお願いしてよろしいでしょうか?」

 アリシアが声をかけると、マリーは「はい!」と笑顔で返事をする。


「オレは?」と今度はタバサ。いやいや、オマエは初めてじゃないだろう!


「タバサは、アッシの手伝いだ!」とジョージが彼女の肩に腕を乗せた。

 ボクは「ふう」と一息つく。


「それじゃみなさん、今日もよろしくお願いします」とひとこと言って解散した。

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