第33話 現行犯確保! となる

 夜中に、工房へ忍び込んでいたのは、女の子だった!


 一応、逃げないように手足を縛る。落ち着いたところで――

「えーと……それで、キミの名前は?」


 女の子はムスッとした顔のまま、なにも言わない。

「うーん。何か言ってくれないと、困るんだけど――」

 ボクは頭をいた。


 アリシアも、「ココに入って、どうしようとしたのですか?」と彼女に声をかけるのだが、まったく応答がない。


「仕方ない……衛兵を呼んで連れてってもらうか?」

 そうつぶやくと、アリシアが「まだ子供なのにカワイそうです……」なんて言う。


「子供じゃない! もう、十八だ!」

 いきなり大声で叫んだと思ったら、女の子はそんなことをぶっちゃける。

「えっ? 私より年上だったのですか⁉」

 そう驚くアリシア。まあ、彼女も充分童顔なんだけど……


 黒髪のベリーショート。肌は褐色でボーイッシュ。身長は百四十センチくらいの小柄、アリシアが『子供』と勘違いしてもおかしくないのだが、唯一『大人』な部分はム・ネ。小さなデニム生地のシャツの中で窮屈きゅうくつそうにしていた。やはりデニム生地の短パンを履いて、あぐらをかいている姿は、女の子というより生意気にガキのようだ――ムネ以外は……


 その容姿――前の世界で読んだラノベだと、ある人種が当てはまる。ボクは、彼女にたずねた。

「もしかして、ドワーフ?」

「ちがうわい! オレは人間だ!」

 いきなり怒られた。「ごめん……」と一応謝っておく――なんか、どっちが被害者なのか、わからなくなってきた……


「えーと、それでキミはどうしてウチの工房に入ったの? なにを盗もうと?」

「――タバサだ。なにかを盗もうとしたんじゃない。使っている工具を見たかっただけだ」

 相変わらず不愛想な顔でそう言う。えっ? 工具を見たかった?


「あのう、タバサさん? 工具をどうして?」

 ボクが使っている工具で特に珍しいモノはない。王都の工具屋で買えるモノばかりだ。そんなモノをどうして?


「商売がどんな工具を使っているか、知りたかったんだ」


「――えっ?」


 

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