第18話 休暇となる

 武器屋のオヤジから大量注文が入って、ボクとアリシアは寝る間も惜しんで魔盾まじゅんを作り続けた。

 それで、なんとか三日で二十枚を作ったのだが、それからも続々と注文が入る。結局、追加で十五枚を翌々日におろした。魔盾一枚で、大銀貨一枚の売り上げ。しかも、材料費は武器屋持ちなので、大銀貨三十五枚が手元に残った。たった五日で――である。


「いやあ、ほしいという冒険者がまだまだたくさんいるよ。昨日なんかはトップパーティの『シュトラール』が十枚まとめて注文してきたぞ」

 盾を受け取りにきた武器屋のオヤジがそう声をはずませる。


「えっ? シュトラール? ブルズと並ぶ王都勇者パーティの双璧と言われる?」

「ああ、魔盾まじゅんのおかげでダンジョンの攻略速度が数倍早くなったらしい。近頃は魔導士も買いに来るぞ」

「魔導士も⁉」


 魔導士がダンジョンで狩りを行う場合、剣士のような前衛の助けが必須だった。それが、魔盾のおかげで魔導士のソロでも十分やっていけるという評判が広まったらしい。


「そういうわけだ。だから、じゃんじゃん作ってくれ! もちろん、これからも材料費はこちら持ちだ!」

 そう威勢の良い話をオヤジはするのだが――


「すみませんが、ちょっと二日ほど休ませてもらえないでしょうか?」

 さすがに五日間もぶっ続けで仕事を続けてきたので、少し休みたいとお願いした。


「そうだな。カラダを壊してしまったら元も子もないモノな。それじゃ次は三日後、来ることにするよ」


 それと、次から魔盾一枚あたり大銀貨二枚で買い取ると言ってきた。

「えっ? そんなに値上げして大丈夫なんですか?」

「実はな、魔盾を転売しているヤツが現れてな――」

「――えっ?」


 オヤジは大銀貨二枚で販売していたのだが、それを大銀貨三枚で転売する輩が出てきたそうだ。

「だから、転売を防止するためにも、売値を銀貨三枚にしようと思ってね」

「そうなんですね……」


 できるだけ安い値段でみんなが喜んでほしい――そう思っていたのだけど……供給が間に合わない状態のまま安い価格で販売すると、転売されてしまうという問題が出てくるんだな……


 武器屋のオヤジは「それじゃ、二日間ゆっくり休んでくれ」と言って、工房から出て行った。


「モノを売るって、いろいろ大変なんですね……」

 アリシアが『困った』と言う顔を見せる。

「うん、そうだね……まあ、それはともかく――アリシアは二日間、ゆっくり休んでね」


 魔石に魔法を封じ込める作業をあれこれ五十個以上、アリシアはこなしてきた。そろそろ休ませてあげたかったのだ。


「はい……ヒロトさんは?」

「ボクはこれを修理しないと――」

 そう言って、アーノルドさんからあずかった盾を見る。一週間後に取りに来ると言っていたので、そろそろ受け取りに来る頃だ。なのに、まだ修理を始めてもない。


「えっ? それじゃヒロトさん、お休みできないんじゃ……」

「ボクは平気だよ」

 そう言うとアリシアが心配そうな顔をした。

「けっして、ムリしないでくださいね」


 夕飯はなにか美味しいモノと作ります――そう言って、アリシアは市場へ買い出しに行った。

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