カップル

(はぁ……緊張するなぁ……)


 放課後──一条は落ち着かない様子で廊下を歩いていた。目的はただ一つ──セリナとの待ち合わせ場所である校門前だ。


(にしても……)


 一条は歩きながら考えていた。

 なぜ、セリナが自分のことを誘ってくれたのかということを……。


(まさか……また告白されるとか? いや、さすがにそれはないか……)


 そんなことを考えているうちに、校門が見えてきた。そしてそこには──既にセリナの姿があった。彼女は一条に気付くと、笑顔で手を振ってきた。


(やばっ……! めっちゃ可愛い……!)


 セリナの笑顔を見た瞬間──一条の心臓の鼓動が速くなった。一条は深呼吸をすると、気持ちを落ち着かせてからセリナに向かって歩いていく。


「ごめん、待たせちゃったかな?」

「いえ、私も今来たところです」


 セリナは笑顔で答えると──続けて言った。


「それでは行きましょうか」


 2人は並んで歩き出した。

 そして、少し歩くと──そこにはお洒落なカフェがあった。どうやらここが目的地らしい。


 入店すると店員に案内されて──2人は窓際の席に座ることになった。


(なんか……めっちゃ緊張してきたなぁ……)


 一条は店内を見回した。

 すると、周りはカップルだらけだった。

 自分たちもカップルに見られているのではないかと思うと、余計に恥ずかしくなってくる。


「どうかしました?」


 セリナは不思議そうに首を傾げている。

 その表情を見ると──なんだか可愛らしく思えた。


(それにしても……本当に綺麗だよなぁ)


 改めて見ると、本当に美人だと思う。スタイルもいいし、顔立ちも整っているしで非の打ち所がない感じだ。


「いや……なんでもない」


 一条が答えると、セリナは不思議そうな顔をしたが──それ以上追求してくることはなかった。


 それからしばらくすると、注文したメニューが届いた。

 一条はカフェオレを頼み、セリナは紅茶を頼んだようだ。

 彼女の仕草はとても上品で、思わず見惚れてしまうほどだった。


(やばいな……これは反則だろ)


 そんなことを思いながら、一条はカフェオレを口に運んだ。すると──セリナも同じようにしてカップを口に運んでいるのが見えた。


(なんか……本当にカップルみたいだよな……俺たち)


 そう思うと──一条は顔が熱くなるのを感じた。


 それからしばらくの間、2人は他愛もない会話をしながら過ごした。

 

 そして──いよいよ本題に入ることにした。


「それで……セリナさん」

「はい?」


 セリナはキョトンとしている。一条は大きく息を吸うと、意を決して尋ねた。


「どうして俺を誘ってくれたの?」

「それは……」


 セリナは少し考えた後、照れたようにはにかみながら答えた。


「一条くんのことが大好きだからですよ……」

「っ……!」


(ま、まじか……)


 一条は動揺していた。

 まさかこんなストレートに告白されるとは思っていなかったのだ。


「えっと……それは……」

「もちろん友達としてではなく、異性として一条くんのことが大好きだという意味です」

「あ、ありがとう……」


 一条は思わず礼を言ってしまったが──正直、どうしたらいいかわからなかった。


「えっと……その……一応確認するけどさ、セリナさんは俺のことが大好きなんだよね?」


 一条はストレートに尋ねた。


 すると、セリナは微笑みながら答えた。


「はい、大好きです!」


 セリナの目を見ると、嘘を言っているようには思えない。本気で自分のことが好きなのだと理解すると、一条はますます困惑した。


(ど、どうすればいいんだ……?!)


 一条が悩んでいると、セリナが優しく微笑んで言った。


「私は、一条くんと恋人になりたいと思っています」

「っ……!」


 その言葉を聞いた瞬間──一条は胸が高鳴るのを感じた。それは決して不快なものではなく、むしろ心地良いものだった。


(そうか……俺は嬉しかったのか)


 そう思うと、自然と笑みが溢れてきた。

 

 そして──一条の答えは決まっていた。 


「俺も同じ気持ちだよ」


 一条の言葉を聞いて、セリナはとても嬉しそうに微笑んでいた。その笑顔を見た途端、一条も幸せな気分になった。


(あぁ……やっぱり可愛いな)


 一条がそんなことを考えていると──セリナが再び口を開いた。


「それじゃあ、これからは恋人としてよろしくお願いしますね!」

「こちらこそよろしく」


 2人は握手を交わした。お互いの体温を感じるように──強く握りしめる。そして、そのまま見つめ合うと、自然と距離が縮まっていく。 


 そのまま唇同士が触れ合いそうになった瞬間──一条は慌てて離れた。


(って……あれ……?)


 そこで我に返った一条は、自分が何をしていたのか理解した。


(まずいっ……! これは非常にまずいぞ……!)


 一条が動揺していると──セリナは首を傾げていた。


「どうかしましたか?」

「えっ? あっ、いや……その……」


 一条が戸惑っていると──セリナは再び微笑んだ。


「大丈夫ですよ」

「えっ……?」


 セリナは一条の胸に手を置いた。そして、優しく撫でてくる。その手つきはとても優しくて、不思議と心が落ち着いた気がした。


「私は一条くんの彼女になったんですから……いつでも甘えてくださいね!」


(まじか……)


 一条は困惑しながらも、覚悟を決めた。


「それじゃあ……遠慮なく」


 そう言うと一条は、セリナに優しくキスをした。


「んっ……」


 セリナは小さく声を上げたが──抵抗することなく受け入れてくれた。


(あぁ……やばいな、これ……)


 一条の理性が崩壊しかける中──唇が離れると、セリナと目が合った。彼女は頬を赤く染めながら微笑んでいる。その瞳からは愛情が溢れていた。


「ふふっ、これからよろしくお願いしますね……悠人くん」

「こちらこそよろしく……セリナさん」


 2人はもう一度唇を重ねた──こうして2人は、恋人同士カップルになったのだった。

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